2020 年 36 巻 2 号 p. 97-106
先天性心疾患は,その臨床的重要性にもかかわらず,大多数の症例の遺伝的病因は未知であり,いわゆる「多因子性」疾患と考えられてきた.心臓の形態は,複雑な3次元構造を構築するために必要となる,時間的,空間的な遺伝子制御を受けて発生する.先天性心疾患の病因を解明するために,心血管形態形成における個々の部位特異的な発生に焦点を当てたアプローチが重要となる.近年の目覚ましい分子生物学の発展に伴い,遺伝子改変動物,さらには幹細胞を用いた研究が精力的に行われ,心臓の各コンポーネントの発生は複数種の心臓前駆細胞が寄与することが明らかとなり,この20年間で心臓発生および疾患発症メカニズムに関する新たな知見が急速に集積された.このレビューでは,小児循環器疾患の近年の基礎的知見の発展と,今後の展望について記載する.