2020 年 36 巻 2 号 p. 107-115
小児呼吸循環不全患者に対する体外式膜型人工肺装置(ECMO)の歴史は古く,確立された補助手段である.その対象は心疾患症例の急性循環不全のみならず,種々の呼吸器感染症や敗血症,蘇生補助装置としても適応は拡大している.また重度の心機能低下例や高度低酸素血症例に対してもカニュレーションの工夫により一定の効果を得ている.しかしながら,右心バイパス症例のように依然救命困難な疾患群は存在し,比較的合併症のリスクが高い治療法であるため,救命例においてもしばしば神経学的合併症などが問題となる.ECMOによる更なる救命率の向上と合併症回避のためには,近年の成績の概要,新たな知見を集積するとともに,多職種を交えた導入シミュレーション等の体制整備が必須である.