2020 年 36 巻 4 号 p. 321-327
多源性心房頻拍は乳児期に発症し,頻拍がインセサントとなることで,不整脈誘発性心筋症に陥ることがある.乳児では自覚症状を訴えることがなく,症状が進行してから発見されることが多い.症例は4か月の男児.4か月健診での脈の不整および頻脈を指摘され紹介となった.来院時,顔色不良,末梢冷感を認めた.胸部レントゲンでは心胸郭比65%,肺うっ血を伴っていた.心電図では多源性のP波を認め,HR 220~240 bpmの不規則な心拍であり,多源性心房頻拍と診断した.心臓超音波検査では著明な心機能低下と左室拡大(左室拡張末期径30.0 mm, 130% of Normal)を認めた.まず頻拍の停止,心拍数低下を目的にアミオダロンを静注投与したところ心拍数の低下は認めたが,血圧低下を来したため,気管挿管,カテコラミン投与で治療を開始した.頻拍はアミオダロン,ランジオロール,アプリンジン投与で洞調律となった.洞調律復帰後に徐々に心機能は改善し,不整脈誘発性心筋症と診断した.抗不整脈薬による頻拍のコントロールが可能であれば,不整脈誘発性心筋症は心機能の改善が期待できる.