2020 年 36 巻 4 号 p. 287-293
背景:術後乳び胸に代表される中枢性リンパ管疾患は,胸管などの中枢リンパ管に起因したリンパ流の障害で,難治化が問題となる.新たな概念や治療法が報告されるなかで,特殊治療を専門とする一部の医師に総合的な相談が寄せられている.本研究は,中枢性リンパ管疾患に関するコンサルトの実状を明らかにすることを目的とした.
方法:2016年5月からの4年間に,本疾患の診療に関する相談案件を対象とした.相談元病院の地方区分,病院種類,医師の専門科,相談症例の特徴,主たるコンサルト内容を後方視的に検討した.
結果:対象は全38件であった.経年的に件数は増加し,相談元の内訳として関東地方,大学病院,小児循環器関連医師が多く,術後胸水の症例が最も多かった.一方で意外なことに,地方や病院種類・専門科にかかわらず,手術の執刀依頼よりも治療方針そのものに関する相談が多くみられた.
結論:中枢性リンパ管疾患の診療にあたり,治療戦略の構築が重要と考えられた.われわれの診療フローチャートを一案として示す.