2021 年 37 巻 1 号 p. 57-63
modified Blalock–Taussig shunt (mBTS)感染性閉塞は症例報告が散見される程度で,全体像は不明な点が多い.自験6例の経過から臨床像の把握と治療方針の検討を行った.基礎疾患はFallot四徴2例,完全型房室中隔欠損兼肺動脈閉鎖・純型肺動脈閉鎖・三尖弁閉鎖・総動脈幹遺残各1例であった.mBTS閉塞時に感染性閉塞と診断したのは2例のみで,残りは閉塞判明後の精査で感染性閉塞と診断した.起因菌はメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌3例,サルモネラ菌・セラチア菌・表皮ブドウ球菌各1例であった.3例でmBTS近位側吻合部に仮性瘤を形成した.新規の肺血流供給源をoriginal BTS(2例),心臓カテーテル治療によるmBTS再開通・右室流出路形成術・右室肺動脈導管サイズアップ(各1例)により確保した.右室肺動脈導管サイズアップ以外では肺血流確保が不可能な1例のみ人工物を使用した.心臓カテーテル治療でmBTSが再開通した1例以外で感染巣(人工血管グラフト,仮性瘤)を除去した.mBTS感染性閉塞では,閉塞との関連を疑う病歴の乏しい症例もあり注意を要する.mBTS近位側吻合部の仮性瘤は感染性閉塞を示唆する.(1)低酸素血症への対応,(2)新たな肺血流供給源の確立,(3)人工物を使用しない術式,(4)感染巣除去,を基本に症例ごとに治療方針を検討する必要がある.