日本小児循環器学会雑誌
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37 巻, 1 号
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巻頭言
Review
  • 永井 礼子
    2021 年37 巻1 号 p. 2-9
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    分子遺伝学分野の飛躍的な発展に伴い,肺高血圧(pulmonary hypertension: PH)における遺伝学的背景の検討も目覚ましい進歩を遂げている.2018年の6th World Symposium on Pulmonary Hypertension (6th WSPH)においては肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension: PAH)の原因遺伝子として17遺伝子が挙げられることとなった.この総説では,6th WSPHの後も次々と同定されているPAHの原因遺伝子候補について,筆者らの検討も含めて解説する.さらにPAHの新たな修飾遺伝子・感受性遺伝子に関する興味深い報告について述べ,その解釈の方法について考察する.最後に,その他の注目すべき基礎研究について紹介する.

  • 藤田 諒, 貞廣 威太郎, 家田 真樹
    2021 年37 巻1 号 p. 10-17
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    心筋細胞は再生能を持たず,心臓が障害を受け心筋細胞が壊死した場合,損傷部位は線維芽細胞によって占有されるため,致死的な不整脈の発生起源や心筋収縮能の低下を引き起こす.薬物療法やペースメーカーなどの治療法が適応とならない重症心不全では心臓移植や人工心臓が根本治療となり得るが,ドナー不足や合併症などの課題が残る.現在は,iPS細胞から誘導した心筋細胞による再生医療が期待され精力的に研究が進められているが,未だ腫瘍形成の可能性などの問題を抱えている.2010年に我々が開発したダイレクトリプログラミングによる心筋細胞誘導法はiPS細胞が抱える課題を解決できる可能性があり,我々の発表以降,多くの研究者によって新たな心臓リプログラミング因子や機構があることが報告されている.本レビューでは,ダイレクトリプログラミングによる心臓再生・形成における最新の知見をまとめ,また我々が開発したより安全なベクターによる生体内心筋誘導法についても言及し,今後の心筋再生医療の可能性と課題について報告したい.

原著
  • 真田 和哉, 金 成海, 石垣 瑞彦, 小山 雅司, 佐藤 慶介, 芳本 潤, 満下 紀恵, 新居 正基, 田中 靖彦
    2021 年37 巻1 号 p. 18-26
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    背景:小児心臓カテーテル検査・治療において面積線量積/体重比(DAP/BW)は被ばく線量の比較に有用と言われている.年代と技術の変遷による被ばく低減の効果についてDAP/BWを中心に後方視的に検討した.

    方法:15歳未満が対象.ASD閉鎖(A群)107例,末梢肺動脈バルーン血管形成(B群)117例,体肺側副血管コイル塞栓(C群)395例,診断(D群)1,918例,カテーテルアブレーション(R群)220例を,2008~2011年を期間①,2012~2016年を期間②,2017~2019年を期間③とし被ばくのデータを比較した.

    結果:DAP/BW [μGym2/kg]はA群,R群は③で低く[A群:①; 13.5, ②; 13.5, ③; 9.8, p<0.05, R群:①; 51.6,②; 33.4,③;20.5, p<0.05],C群では同等だった.B群,D群は③で高かった[B群:①; 76.8, ②; 108.5, ③; 117.0, p<0.05, D群:①; 41.0, ②; 45.1, ③; 46.0, p<0.05].

    結論:技術の変遷によりA群,R群では被ばく低減効果を認めたが,B群,D群では病変や疾患の複雑化により被ばく線量が増加した.DAP/BWは治療ごとの被ばく線量の把握に重要で,被ばく低減の取り組みによって得られた効果の指標となりうる.

  • 櫨木 大祐, 塩川 直宏, 上野 健太郎, 楠生 亮, 野村 裕一, 吉永 正夫
    2021 年37 巻1 号 p. 29-34
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    背景:心拍数で補正されたQT時間(QTc)は自動計測のほうがマニュアル計測より長い.学校心臓検診でQT延長をスクリーニングする基準値はマニュアル計測で作成されており,自動計測で使用するとスクリーニング過多となる.

    方法: 2009年から2013年に鹿児島市で学校心臓検診を受けた,小1・中1全員の心電図記録を後方視的に解析した.自動計測QTc値がマニュアル抽出基準値を超えた対象でマニュアル計測を行い,実際にマニュアル抽出基準値を超えている対象を抽出した.抽出された対象の自動計測QTc値を参考に基準値を考案した.

    結果:対象者は総数54,586名,マニュアル計測対象者は1,233名(2.3%)であった.そのうちマニュアル抽出基準値を超えていたのは52名(0.10%)で,それらの自動計測QTc最低値は男女別にそれぞれ小1が445 msと447 ms,中1が463 msと451 msであった.

    結論:学校心臓検診のFridericia補正による自動計測QTc基準値は,学年毎に男女共通でそれぞれ小1で445 ms,中1で450 msが妥当と考えられた.

症例報告
  • 白水 優光, 石川 友一, 倉岡 彩子, 兒玉 祥彦, 中村 真, 牛ノ濱 大也, 佐川 浩一, 橋本 丈二, 安東 勇介, 中野 俊秀
    2021 年37 巻1 号 p. 35-41
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    症例は1歳時に先天性完全房室ブロックに対しペースメーカー植込み術が行われた16歳男性で,9歳時より心外膜リードによる心絞扼と思われる肺動脈弁上狭窄がみられた.運動負荷試験では一過性のST変化が見られるのみで胸痛は誘発されず,心筋虚血は否定的と判断された.肺動脈弁上狭窄が進行し,手術適応の評価目的に心臓カテーテル検査を行った.左室造影前に上肢挙上の姿勢でテスト造影を行った直後,患者は突如意識消失を来した.発症時の心電図では心室性期外収縮の頻発後にST変化が出現し,急速に徐脈から心停止に至っていた.上肢挙上や期外収縮の頻発に伴い冠動脈が圧排され心筋虚血を来したと推察し,緊急手術によるリード交換を行った.心絞扼が疑われる症例では心臓CTにより冠動脈圧排の有無を確認し,突発的な心筋虚血の危険性を念頭に速やかなリード交換を検討すべきである.

  • 林 賢, 長谷川 智巳, 堀口 祥, 田中 敏克
    2021 年37 巻1 号 p. 44-50
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    心房中隔欠損(ASD)はまれに乳児期早期に重症化することがある.また肥大型心筋症(HCM)は左室拡張障害を伴い,先天性心疾患合併例においては予後不良とされる.今回HCMを合併したASDに対して乳児期早期に治療介入が必要と判断し,開窓付閉鎖術が有効であったので報告する.症例は基礎疾患にCardio-Facio-Cutaneous症候群,心疾患にASD, HCMをもつ5か月女児で,発熱と痙攣を主訴に受診し,左室拡張障害による肺うっ血に伴う循環不全と診断した.利尿剤投与のみでは改善せず,一酸化窒素吸入によって右心系縮小と左心系拡大が得られて改善したため,肺高血圧症の急性増悪が心室間連関による右室拡大に伴う左室圧排を引き起こし,左室拡張障害の増悪による低心拍出性心不全を来したと考察した.入院18日目に施行した心臓カテーテル検査では,肺体血流比(Qp/Qs)=6.1/2.4=2.6,肺血管抵抗2.1 Wood unit·m2を認め,ASDを介する高度な左右短絡も低心拍出量の一因と考えられたため,4 mm開窓付ePTFEパッチによるASD部分閉鎖を施行して左右短絡の減少を図った.術後評価カテーテル検査では,左房圧は許容範囲で,左右短絡減少と心拍出量増加を認めて良好な血行動態を示した.また,心房中隔開窓部の閉鎖試験により左室拡張末期圧の上昇を認めたことから開窓は適切であると評価した.左室拡張障害を伴うASDは早期に治療介入が必要となることがあり,そうした場合に開窓付ASD閉鎖術は安全かつ有効であると考える.

  • 三木 康暢, 田中 敏克, 松岡 道生, 亀井 直哉, 小川 禎治, 富永 健太, 城戸 佐知子
    2021 年37 巻1 号 p. 51-56
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    特発性心筋症の診断には,全身疾患と関連がある二次性心筋症の除外が必要である.栄養素欠乏はその一つである.今回我々は,短腸症候群に合併したカルニチン欠乏性心筋症を経験した.6歳女児が入院5日前から感冒症状があり,起坐呼吸を認めたため入院となった.短腸症候群のため経静脈栄養を行っていた.腸管からの慢性出血による貧血を認めていた.入院時胸部レントゲンでは心胸郭比60%,心エコーで左室内径短縮率17%であった.Hb 6.7 g/dLと貧血を認め赤血球輸血を行い,ミルリノンを投与するも心不全症状は改善しなかった.既往からL-カルニチンを補充し,3日で心収縮は改善した.治療後に遊離カルニチン17.8 µmol/Lと判明し,カルニチン欠乏性心筋症と診断した.カルニチン欠乏は治療可能な二次性心筋症の鑑別の一つとして重要であり,リスクを有する児では定期的な血中濃度測定が望まれる.貧血や感染など心負荷増大時には注意を要する.心機能改善には早期のL-カルニチン補充が重要である.

  • 山田 佑也, 鈴木 孝典, 伊藤 諒一, 郷 清貴, 大島 康徳, 鬼頭 真知子, 森鼻 栄治, 河井 悟, 安田 和志
    2021 年37 巻1 号 p. 57-63
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    modified Blalock–Taussig shunt (mBTS)感染性閉塞は症例報告が散見される程度で,全体像は不明な点が多い.自験6例の経過から臨床像の把握と治療方針の検討を行った.基礎疾患はFallot四徴2例,完全型房室中隔欠損兼肺動脈閉鎖・純型肺動脈閉鎖・三尖弁閉鎖・総動脈幹遺残各1例であった.mBTS閉塞時に感染性閉塞と診断したのは2例のみで,残りは閉塞判明後の精査で感染性閉塞と診断した.起因菌はメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌3例,サルモネラ菌・セラチア菌・表皮ブドウ球菌各1例であった.3例でmBTS近位側吻合部に仮性瘤を形成した.新規の肺血流供給源をoriginal BTS(2例),心臓カテーテル治療によるmBTS再開通・右室流出路形成術・右室肺動脈導管サイズアップ(各1例)により確保した.右室肺動脈導管サイズアップ以外では肺血流確保が不可能な1例のみ人工物を使用した.心臓カテーテル治療でmBTSが再開通した1例以外で感染巣(人工血管グラフト,仮性瘤)を除去した.mBTS感染性閉塞では,閉塞との関連を疑う病歴の乏しい症例もあり注意を要する.mBTS近位側吻合部の仮性瘤は感染性閉塞を示唆する.(1)低酸素血症への対応,(2)新たな肺血流供給源の確立,(3)人工物を使用しない術式,(4)感染巣除去,を基本に症例ごとに治療方針を検討する必要がある.

  • 小野 隆志, 中澤 誠, 森島 重弘, 緑川 博文, 植野 恭平, 影山 理恵
    2021 年37 巻1 号 p. 64-69
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    重症複雑心奇形を持つ患者に対する外科治療は,多くの胸骨正中切開からの再手術が必要になることが多い.今回我々は肺動脈閉鎖を伴った修正大血管転位症で,4度の胸骨正中切開からの手術を含む6度の心臓手術を受けていた患者に,5度目の胸骨正中切開からの心臓手術を施行した.患者は29歳女性.ダブルスイッチ手術後に僧帽弁位と三尖弁位の機械弁置換術が施行されていた.最近になって反復する腹水貯留や失神,動悸,倦怠感を呈し,心エコー,CT, 心臓カテーテル検査により重度の左室流出路狭窄と肺動脈弁逆流,中等度の大動脈弁閉鎖不全が認められた.大動脈弁位と肺動脈弁位の人工弁置換術と左室流出路狭窄解除を施行し最終的に機械弁による4弁置換の状態となった.術後経過は良好で症状は劇的に改善した.

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