2021 年 37 巻 2 号 p. 96-103
背景:鹿児島市の学校心臓検診(心検)の1次検診は医師6~8名の判読後に集団討議で抽出例を絞り込む集団判読が特徴である.本心検の精度を検討した.
方法: 1989年から30年間の小・中学校心検受診者67,723例を対象とし,2次抽出例の割合(抽出率)と全対象内の心検で診断された有疾患例の割合(心検有病率)と既診断例も含めた全有疾患例の割合(総有病率)を解析した.
結果:年度毎の抽出率は12誘導心電図が導入された1994年以降で,集団判読導入の2001年以前は2.4% [1.9–3.0%](中央値[範囲])で導入後は1.5% [1.2–2.2%]であり,有意に低値だった.しかし,集団判読導入後の心検有病率は1994年から2000年の期間と比較して有意に高率だった(43% [33–50%] vs. 28% [26–35%]).総有病率は0.60% [0.50–0.85%]だった.
結論:当市心検の抽出率は全国(3.0%)より低いが,総有病率は全国(0.9%)に近く十分な精度だった.この精度の維持は,12誘導心電図の導入に加えて集団判読の効果と考えられた.