背景:先天性心疾患に先天性消化管閉塞症を合併する場合には,個々の症例に応じた治療戦略が求められる.しかし,両者を合併した症例の治療成績,予後に関する報告は少ない.
対象と方法:1994~2011年に当院で治療を行った先天性消化管閉塞症を合併した先天性心疾患61例を対象とし,診断,治療経過,予後を後方視的に検討した.消化管閉塞症と心疾患ともに手術介入した症例については消化管疾患毎のサブグループに分けて治療経過,問題点を検討した.
結果:心疾患は心室中隔欠損22例,動脈管開存8例,Fallot四徴7例,心房中隔欠損5例,大動脈縮窄,肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損,両大血管右室起始が各3例,完全型房室中隔欠損,単心室,総肺静脈還流異常が各2例,その他4例であった.合併消化管閉塞症は,鎖肛31例,食道閉鎖17例,十二指腸閉鎖・狭窄10例,Hirschsprung病10例であった.予後は生存51/61例(83%)であった.染色体異常・奇形症候群が半数あり,死亡例では70%を占めた.心疾患,消化管閉塞症ともに手術したものが40例で,うち38例は心臓手術より消化器手術を先行することで概ね経過良好であった.しかし,鎖肛の1例で人工肛門の位置が心臓手術に影響した.食道閉鎖で肺血流増加のため1例心臓手術を先行し,十二指腸閉鎖・狭窄で1例消化管術後に肺血流増加で縫合不全を合併した.Down症候群に伴うHirschsprung病の3例が劇症型腸炎で急変,死亡した.
結論:消化管閉塞症を合併した先天性心疾患において,基本的に消化管から介入し,次に心疾患に介入する方針で生存率83%の結果が得られた.肺血流増加型の心疾患は循環動態のコントロールが付かない例や創傷治癒に影響する例があり,迅速な対応が必要である.Down症候群のHirschsprung病,人工肛門造設例における劇症型腸炎は致死的となりうるため,注意が必要である.
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