日本小児循環器学会雑誌
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Brugada症候群と不整脈原性右室心筋症
今村 知彦 牧山 武
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2024 年 40 巻 1 号 p. 27-40

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抄録

Brugada症候群(BrS)と不整脈原性右室心筋症(ARVC)は,特異的な心電図所見と致死性不整脈を呈する遺伝性心疾患である.BrSの約15~20%にSCN5A遺伝子の機能喪失型変異が検出され,右室流出路の貫壁性活動電位勾配をもとにした再分極障害と,右室流出路心外膜側の線維化とGap結合の異常による脱分極障害がcoved型ST上昇や不整脈基質の原因となる.中年期の発症が多く,頻度は男性で8~10倍多い.この性差にはテストステロンが関与するが,女性ではエストラジオールが保護的に作用する可能性がある.ARVCは,主にデスモソーム関連遺伝子の異常により発症し,細胞間接着の不安定化とWnt/β-catenin経路の異常により心筋細胞が線維脂肪変性する.これに伴い,右側胸部誘導のε波や陰性T波が現れる.右室病変主体のARVCはrevised Task Force criteriaを用いて診断し,左室や両心室に病変を認める症例はPadua criteriaで診断する.小児のBrSやARVCは稀だが,致死性不整脈の頻度は成人より高い.小児症例のエビデンス蓄積が期待される.

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