2024 年 40 巻 2 号 p. 132-137
重複大動脈弓(double aortic arch: DAA)は血管輪を来す代表的な疾患である.一方Prader–Willi症候群(PWS)は先天異常症候群の一つで,特に新生児期から乳児期は筋緊張低下による哺乳障害や,時に呼吸障害を起こすことがある.これまでPWSにDAAを合併した症例報告はない.症例は他院でPWSと診断されフォローされていた.1歳6カ月時に吸気性喘鳴を認め当院の救急受診し,精査でDAAと診断した.軽度の吸気性喘鳴のみで酸素化不良や努力様呼吸は認めず待機手術の方針として退院したが,退院後17日目に自宅で食事中に誤嚥による窒息で死亡した.本症例ではPWSに伴う筋緊張低下や呼吸障害がDAAの診断を困難にし,さらに症状の増悪を惹起したと考えられた.筋緊張低下や嚥下障害のリスクの高い基礎疾患を有する症例に血管輪を合併した場合には,厳重な管理のもと速やかに治療を行うことが肝要である.