2024 年 40 巻 2 号 p. 127-131
右冠動脈肺動脈起始(ARCAPA)は稀な先天性心疾患である.体重増加不良の経過観察中に原因検索の一環として行った心臓超音波検査で診断した1歳2カ月の女児を経験した.心臓超音波検査で左冠動脈主幹部はやや太く,右冠動脈の起始部が不明であり,カラードプラで心室中隔に複数の血流シグナルを認めた.冠動脈CTで右冠動脈が主肺動脈から起始しておりARCAPAと診断を確定した.心臓カテーテル検査による左冠動脈造影では左冠動脈から側副血行路を介し右冠動脈に造影剤が流れ込み主肺動脈が造影された.心臓超音波検査での心室中隔の複数の血流シグナルは左冠動脈から右冠動脈への側副血行路であった.ARCAPAは心筋梗塞や突然死を来すことがあり,本例も右冠動脈の大動脈への再移植が行われた.特長的な所見を示す本症の診断には心臓超音波検査が有用であった.