2024 年 40 巻 3 号 p. 151-162
QT延長症候群(long QT syndrome; LQTS)は,心電図でのQT間隔の延長と心室不整脈による失神や突然死を特徴とする遺伝性不整脈疾患である.本邦では学校心臓検診により無症状で診断される症例も多い.LQTS患者の約50%に原因遺伝子の病的バリアントが同定される.遺伝型は17以上あり,不整脈発生の契機や治療方法が一部異なるため,テーラーメード医療が行われているが,これは正確な診断を前提としている.まずT波形態や運動負荷試験での補正QT間隔(QTc)の変化様式に着目し,表現型を確認する.次に遺伝学的検査を実施し,遺伝型と表現型の整合性を確認する.心イベントのリスク評価には,性別,QTc,病的バリアントの種類,心イベントの既往が重要である.さらに小児期には年齢によりQTc,心イベントの危険性が変化するが,この変化は遺伝型,性別により異なっている.