日本小児循環器学会雑誌
Online ISSN : 2187-2988
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40 巻, 3 号
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巻頭言
Reviews
  • 青木 寿明
    2024 年40 巻3 号 p. 141-150
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル フリー

    成人の不整脈治療の進歩とともに小児・先天性心疾患の不整脈治療の進歩には目を見張るものがある.Wolff–Parkinson–White syndrome(WPW症候群)に対しては小児においても安全にアブレーションが行えるようになってきている.また重症の先天性心疾患患者が成人期まで生存するようになり,不整脈,あるいは突然死を起こすことが問題となっている.近年フォンタン手術後の不整脈に対して導管を穿刺してアブレーションする方法が開発された.それに伴い治療成績の改善が得られている.

  • 小澤 淳一, 鈴木 博
    2024 年40 巻3 号 p. 151-162
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル フリー

    QT延長症候群(long QT syndrome; LQTS)は,心電図でのQT間隔の延長と心室不整脈による失神や突然死を特徴とする遺伝性不整脈疾患である.本邦では学校心臓検診により無症状で診断される症例も多い.LQTS患者の約50%に原因遺伝子の病的バリアントが同定される.遺伝型は17以上あり,不整脈発生の契機や治療方法が一部異なるため,テーラーメード医療が行われているが,これは正確な診断を前提としている.まずT波形態や運動負荷試験での補正QT間隔(QTc)の変化様式に着目し,表現型を確認する.次に遺伝学的検査を実施し,遺伝型と表現型の整合性を確認する.心イベントのリスク評価には,性別,QTc,病的バリアントの種類,心イベントの既往が重要である.さらに小児期には年齢によりQTc,心イベントの危険性が変化するが,この変化は遺伝型,性別により異なっている.

  • 田邊 雄大, 大崎 真樹
    2024 年40 巻3 号 p. 163-174
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル フリー

    小児集中治療室(pediatric intensive care unit: PICU)では,様々な心疾患患者が治療を必要としている.その血行動態や解剖,心機能は千差万別であり,同じ患者は存在しない.重症心疾患の集中治療において,何をすべきか,路頭に迷うことがあるかもしれないが,困った時こそ循環生理の基本概念に立ち返るとよい.普遍的な知識だけで全てが狙い通りの経過になるわけではないが,せめて「生理学的に正しい」循環管理を目指して欲しい.そこで,本稿では循環管理の基本原理について述べ,循環器集中治療の面白さを伝えたいと思う.

  • 宗内 淳
    2024 年40 巻3 号 p. 175-185
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル フリー

    小児の肺高血圧はその病態の多様性故に適正な評価を行い,治療方針を決定することが望ましい.本来,肺動脈圧は肺血流量と肺血管抵抗(R)の積で表されるが,高い血管キャパシタンス(C)を持つ肺循環では,RとCの合成抵抗(インピーダンス)として捉える必要がある.Cは肺への一回拍出量を肺動脈の脈圧で除したものと表され,RとCの積は時定数τとなり変時的肺血管容量を反映する.時定数τは年齢,心拍数,左房圧により若干変化する.RとCをプロットした双曲線(RC連関)をみた場合,実臨床で取り扱うR値においてC値の変化は無視できず,C値の変化はより鋭敏に肺血管床の状態を反映する.小児の肺高血圧の主たる病態は先天性心疾患による左右短絡,左心狭窄病変,肺胞低換気,肺血管閉塞性病変および肺血管床低形成であり,この5病態がどの程度寄与しているかを知ることが肺高血圧の血行動態診断として重要である.各病態因子を修飾しつつ肺動脈圧の変化やRC連関を確認することが肺高血圧の適正診断において有用であろう.

  • 板谷 慶一
    2024 年40 巻3 号 p. 186-192
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル フリー

    心臓MRIはfull volumeで心臓の拍動を3次元的に追跡が可能であり,特に位相コントラスト法での血流計測は複雑な解剖においても心血管内腔の血流を計測可能である.心電同期シネ位相コントラスト法3方向をfull volumeで適用した4D flow MRIでは血行動態と心機能を同時に評価できる.特に超音波カラードプラの到達しにくい大血管や右心系では大きな力を発揮する.先天性心疾患の外科手術においては,左右心室機能および駆出率,体肺循環血行動態について心血管内腔での異常加速血流の部位や程度,血管分枝流量,弁逆流量を3次元的に定量評価することで,どこの部位にどう介入するべきかを明確にできることが4D flow MRIの利点の一つである.血流解析にはシミュレーションによる可視化方法もあり,コンピュータ・グラフィックスと重ね合わせることにより手術設計支援が可能である,これは術後血行動態を予測できるが,実計測に基づく4D flow MRIとの照合が有益となる.

  • 石川 友一, 浦邊 裕亮
    2024 年40 巻3 号 p. 193-203
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル フリー

    心臓大血管MRI(CMR)の最大の特徴は,非造影・無被曝・無侵襲である.経時的に繰り返しの撮影が可能であり,成長に伴いエコーでの観察が難しくなっていく小児循環器領域にとても適した検査と言える.CMRは様々な撮影法を包含するが,そのなかでも2D-Phase Contrast(PC)CMRは他のmodalityにはない「任意関心領域の血流量を計測する」という特異な機能を有している.本稿ではこの2D-PC CMRについて解説する.基本原理と撮影の実際を前半に,臨床応用について幅広く後半に記載した.今後のさらなる臨床応用を期待したい.

症例報告
  • 佐藤 大二郎, 金 成海, 石垣 瑞彦, 渋谷 茜, 眞田 和哉, 佐藤 慶介, 芳本 潤, 満下 紀恵, 新居 正基, 坂本 喜三郎, 田 ...
    2024 年40 巻3 号 p. 204-211
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル フリー

    肺静脈閉塞を合併した総肺静脈還流異常では出生後早期の治療介入が求められる.我々は,肺静脈閉塞を伴う総肺静脈還流異常の早産極低出生体重児に対して,ステント留置と再拡張を先行し,待機的な開心術により合併症なく救命された1例を経験した.症例は在胎32週5日,体重1,284 gで出生し,肺静脈閉塞を伴う下心臓型総肺静脈還流異常と診断された.日齢4,狭窄部位である垂直静脈から静脈管にかけてステントを留置した.ステント内狭窄を生じたため,日齢29,日齢38にステント再拡張を行った.日齢57,1,849 gでsutureless法による心内修復術を施行し,合併症なく自宅退院した.

  • 谷内 裕輔, 本多 真梨子, 竹田 義克, 作村 直人, 上野 和之, 宮下 健悟, 藤田 修平, 廣野 恵一
    2024 年40 巻3 号 p. 215-220
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル フリー

    内臓心房錯位症候群の中でも無脾症候群は複雑心疾患を伴うことが多い.脾臓がないため侵襲性細菌感染症発症のリスクも高く近年では予防が重要とされている.症例は7か月の女児で,鎖肛,十二指腸閉鎖,メッケル憩室に対して新生児期に手術が行われた.過去,感染に伴う喘鳴を複数回認めていた.今回,咳嗽と喘鳴が出現して症状が増悪し,深夜に顔面蒼白・チアノーゼを認め緊急入院となった.気管支喘息としてβ刺激薬吸入,ステロイド投与を行ったが症状の改善は乏しく,High-flow nasal cannula (HFNC)が必要となった.HFNC使用後,症状は徐々に改善し,入院9日目にはHFNCから離脱でき,11日目には退院となった.喘鳴の精査目的に行った造影CT検査で気管気管支,気管支狭窄を認め,腹部では脾臓を認めなかった.心エコー検査および造影CT所見からは極軽度の左右短絡を伴う心房中隔欠損,右側大動脈弓,左鎖骨下動脈起始異常が認められた.入院時の採血を再検するとHowell Jolly小体を1%認めた.複雑心疾患を伴わない無脾症候群として抗菌薬予防内服を開始した.複雑心疾患を伴わない無脾症候群が存在することを認識し,診断後は侵襲性細菌感染への予防を講じることが重要であると思われた.

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