抄録
出産後の母親は,育児や家事におわれ,歯科受診にまで時間を割くことは難しい。当歯科は産科が併設しており,院内に託児所がある利点を活かし,当産科で出産した母親を対象に「出産後歯科健診」を行っている。この健診によって,口腔衛生指導や必要である歯科治療を受け,母親の口腔環境が健全になることが期待される。今回,健診を受診した110 名の母親を対象に行ったアンケート調査から以下の結果を得た。1 .健診を受診するまでの期間は,出産後2 か月が一番多かった。2 .69%の母親は妊婦歯科健診を受診していたが,ほとんどの母親が,かかりつけ歯科医はいないと答えていた。3 .歯磨きの回数は,妊娠中と出産後で大きな違いはなかった。4 .喫煙経験のある母親は29%いたが,1 人の母親を除いて,妊娠前か妊娠を機会に禁煙していた。5 .生まれた子どもの口腔の健康については,半数の母親が考えていることがあり,その関心事項は「齲蝕」が一番多かった。6 .当小児歯科が行っている支援外来において,母親の悩みや心配ごとは,アンケート結果とは異なり,「歯磨き」「離乳食」など親子の生活に密着した内容が多くあげられた。 以上のことより,出産後の母親への歯科からの支援は,妊婦と同様に大切であり,歯科医療サイドは,出産後でも受診しやすい環境や体制を作ることが必要であると考える。また歯科からの親子支援を行うためには,他の職種との連携が必要であると考える。