抄録
協力的に歯科診療を受けられない障害児に対し新しい行動調整法を考案した。患児はネット式レストレーナーに入ってもらう。そして定期的に来院してもらい,痛くない予防処置や歯石除去を施す。幾度かの来院を経てネットの中でリラックスできるようになったら行動療法を用いて苦手な歯科器具に対する脱感作トレーニングを始めるという方法であり,当科ではネット・リラックス法と呼んでいる。今回ネット・リラックス法の有効性を検討する目的で,ネット・リラックス法を実施した障害児の保護者に対し,実施前後の患児の行動変化に関するアンケート調査を行った。その結果知的障害のある自閉症児はネット・リラックス法実施後,歯科へ来る,ネットに入る,歯科診療の各々の場面での協力状態が著しく改善し統計学的にも有意差を認めた。一方自閉傾向のない知的障害児も協力状態が改善していたが統計学的には有意差は認められなかった。以上のことからネット・リラックス法は知的障害のある自閉症児に対して有効な行動調整法であると示唆された。