小児歯科学雑誌
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臨床
大臼歯の近心傾斜および萌出不全に対する効率的な咬合誘導
吉村 剛海原 康孝林 文子香西 克之
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2009 年 47 巻 5 号 p. 780-786

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抄録
大臼歯の咬合誘導は,その歯根が複根であり,表面積も広いという解剖学的構造などにより,歯の移動には大きな力が必要となる。そのため,これまでに報告された大臼歯の治療法は,数歯にわたる固定源を必要とするものが多く,いずれの治療法も複雑であった。しかし,咬合誘導はできるだけ単純で容易であることが望ましい。そこで著者らは,パワーチェーンやセクショナルワイヤーなどを利用した装置により,咬合誘導を2 例行った。下顎第二乳臼歯の低位が原因で,下顎第一大臼歯が近心傾斜し,咬合不全を生じた症例に対しては,リンガルアーチとパワーチェーンから構成されるsimple molar controller を用いて治療した。下顎の萌出スペース不足が原因で,下顎両側第二大臼歯が近心傾斜し,萌出困難となった症例に対しては,クリンパブルフックとセクショナルワイヤーを用いて咬合誘導を行った。右側はエラスティックの弾性力を,左側はワイヤーの復元力を利用して治療した。これらの治療の結果,以下のことが明らかとなり,治療法の有効性が示された。1 .いずれの装置も構造が単純で,施術や調整が容易であるため,チェアータイムが短かった。2 .装置の装着期間は3~7 か月と比較的短く,装着期間中に患者が苦痛や違和感を訴えることはなかった。
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© 2009 日本小児歯科学会
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