小児歯科学雑誌
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総説
口腔細菌における循環器疾患に対する病原性の追究
Streptococcus mutans における研究成果を足がかりに
仲野 和彦大嶋 隆
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2010 年 48 巻 1 号 p. 1-10

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抄録
歯科の二大疾患とされる齲蝕と歯周病は,それぞれに関与する口腔細菌種によって引き起こされる感染症である。これらの口腔細菌は,口腔内で病原性を発揮するだけではなく,抜歯等の観血的な処置によって血液中に侵入することが知られている。菌血症は,健常者では一過性であるが,ある種の心疾患を有する対象では,心臓の弁膜や心内膜に血小板やフィブリンと細菌の塊を形成し,感染性心内膜炎の発症につながることがある。一方で,菌血症は侵襲的な処置だけではなく,日常の口腔清掃によっても度々生じている可能性があるとされており,口腔細菌の血液中への侵入は,一般に考えられているよりも高頻度であることが想定される。このことは,口腔細菌が血流を介して様々な組織や臓器に到達し,これまでに解明されていない影響を及ぼしている可能性を示唆している。近年,歯周病と全身疾患との関連が取りざたされており,口腔細菌の及ぼす各種全身疾患への影響が注目されている。著者らは,性状を熟知している齲蝕原性細菌Streptococcus mutans の各種菌株を用い,菌血症をはじめ心臓弁・大動脈・脳組織に及ぼす影響に関する検討を行ってきた。その結果,ある種の表層抗原に変異が生じている菌株が,循環器系・脳血管系に高い病原性を呈する可能性が示された。この分析結果を応用して,対象菌種をS. mutans から口腔細菌種全体に拡大し,詳細な検討を継続している。
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© 2010 日本小児歯科学会
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