小児歯科学雑誌
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48 巻 , 1 号
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総説
  • 仲野 和彦, 大嶋 隆
    2010 年 48 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    歯科の二大疾患とされる齲蝕と歯周病は,それぞれに関与する口腔細菌種によって引き起こされる感染症である。これらの口腔細菌は,口腔内で病原性を発揮するだけではなく,抜歯等の観血的な処置によって血液中に侵入することが知られている。菌血症は,健常者では一過性であるが,ある種の心疾患を有する対象では,心臓の弁膜や心内膜に血小板やフィブリンと細菌の塊を形成し,感染性心内膜炎の発症につながることがある。一方で,菌血症は侵襲的な処置だけではなく,日常の口腔清掃によっても度々生じている可能性があるとされており,口腔細菌の血液中への侵入は,一般に考えられているよりも高頻度であることが想定される。このことは,口腔細菌が血流を介して様々な組織や臓器に到達し,これまでに解明されていない影響を及ぼしている可能性を示唆している。近年,歯周病と全身疾患との関連が取りざたされており,口腔細菌の及ぼす各種全身疾患への影響が注目されている。著者らは,性状を熟知している齲蝕原性細菌Streptococcus mutans の各種菌株を用い,菌血症をはじめ心臓弁・大動脈・脳組織に及ぼす影響に関する検討を行ってきた。その結果,ある種の表層抗原に変異が生じている菌株が,循環器系・脳血管系に高い病原性を呈する可能性が示された。この分析結果を応用して,対象菌種をS. mutans から口腔細菌種全体に拡大し,詳細な検討を継続している。
  • 木本 茂成
    2010 年 48 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    小児歯科医療の目的はいうまでもなく,健全な口腔機能を育成することにほかならない。小児を対象とした齲蝕や歯周疾患の予防,歯冠修復処置,歯内療法処置を含めた保存的治療や外科的処置,さらに保隙を含めた咬合誘導処置など,小児歯科領域の臨床での対応はすべて健全な口腔機能の獲得をめざした小児歯科学の理念に基づいている。近年の疾病構造の変化に伴い,小児患者における歯科受診の希望も歯列・咬合の診査に関するものが増加しており,日常の臨床においては形態的な異常を伴う症例の他,機能的な異常を伴う症例も少なからず見受けられる。理想的な歯列形態や咬合状態は乳歯列期からの正常な口腔機能によって獲得されるものである。この時期の正常な口腔機能,すなわち学習によって獲得される咀嚼機能や成熟型嚥下などの摂食機能は理想的な顎・顔面の成長過程において極めて重要である。このように,生体組織の形態と機能は表裏一体といえるべき存在である。これからの小児歯科医療の主体をなすと考えられる咬合誘導においては口腔機能の発達を考慮した対応が必要である。
  • 鈴木 淳司
    2010 年 48 巻 1 号 p. 20-28
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    小児における侵襲性歯周炎,いわゆる若年性歯周炎においては,Aggregatibacter(以前のActinobacillusactinomycetemcomitansA. a)が高頻度で検出され,宿主の好中球走化性と併せて,特異な歯周炎発症に関与していると考えられているが,いまだそのメカニズムは不明な点が多い。A. a などのグラム陰性菌の産生するLPS は宿主の免疫システムに機能し,破骨細胞の分化を促進することで歯槽骨吸収を惹起されると考えられている。しかしながら,LPS による骨新生への影響は明らかではない。今回,著者らはA. a のLPS が骨芽細胞の分化を阻害し,さらに細胞間ネットワークも阻害することを明らかにし,A. a による歯周炎の発症が,歯槽骨の吸収の促進のみならず歯槽骨新生の阻害も関与している可能性を示した。
原著
  • 日本小児歯科学会学術委員会 , 山﨑 要一, 岩﨑 智憲, 早﨑 治明, 齋藤 一誠, 徳冨 順子, 八若 保孝, 井上 美津子, 朝田 芳 ...
    2010 年 48 巻 1 号 p. 29-39
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    永久歯の先天性欠如は,その発現部位や欠如歯数によって様々な歯列咬合異常を誘発するため,小児期からの健全な永久歯咬合の育成を目標とした継続的な口腔管理を行う上で大きな問題となる。我が国の先天性欠如の発現頻度の報告は,単一の医療機関を受診した小児患者の資料に基づいたものが多く,被験者数も限られている。そこで,日本小児歯科学会学術委員会の企画で国内の7 大学の小児歯科学講座が中心となり,我が国初の永久歯先天性欠如に関する全国規模の疫学調査を実施した。参加7 大学の代表者と実務者による全体打ち合わせ会を通して,調査方法の規格化や症例の審議を重ね,調査の信頼性向上に努めた。対象者は,大学附属病院の小児歯科,またはこれらの大学の調査協力施設に来院し,エックス線写真撮影時の年齢が7 歳以上であった小児15,544 名(男子7,502 名,女子8,042 名)とした。第三大臼歯を除く永久歯の先天性欠如者数は1,568 名,発現頻度は10.09%であり,男子が9.13%,女子が10.98%であった。上顎では4.37%,下顎では7.58%に認められた。上顎および下顎における左右の頻度の差は0.11%,0.14%であり左右差は小さかった。歯種別では,下顎第二小臼歯に最も多く認められ,次いで下顎側切歯,上顎第二小臼歯,上顎側切歯の順であった。
  • 赤坂 徹, 時安 喜彦, 小松 太一, 木本 茂成, 宮城 敦
    2010 年 48 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    口腔感覚を司る三叉神経中脳路核ニューロンの中で咀嚼筋,特に咬筋筋紡錘を支配するニューロンを逆行性染色により特異的に選択し,細胞内に発現しているGABA(A)受容体のサブユニットについて,レーザーマイクロダイセクション,PCR 技法を用いて遺伝子解析を行う方法を想起した。これらの方法の有用性について検討したところ以下の結果を得た。1 .レーザーマイクロダイセクション装置を用いて細胞体の切り出しを行う際にデキストラン・ローダミンB を用いた逆行性の染色は有効な方法であった。2 .細胞などの微細な構成物をピンポイントで切り抜き回収する方法としてレーザーマイクロダイセクション装置は有効であることが示唆された。3 .レーザーマイクロダイセクション装置を用いて回収した細胞体からはGABA(A)受容体を構成するサブユニットのmRNA が検出され,この結果はIshii らの報告とも一致した。
  • 須貝 誠, 松田 康裕, 永山 正人, 加我 正行, 八若 保孝
    2010 年 48 巻 1 号 p. 48-55
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    口腔内における歯質の脱灰,再石灰化を予測することは,齲蝕の発生,進行の予防,治療において重要である。Matsuda らは口腔内の連続的なpH 変化を再現することが可能な自動pH サイクル装置を開発し,その有効性を報告している。本研究では,自動pH サイクル装置を用いて乳歯および永久歯エナメル質の脱灰を比較検討した。試料は健全ヒト乳臼歯および健全ヒト第三大臼歯を厚さ約150 μm の薄片に調整したものを用いた。装置の設定はMatsuda らの方法に準じ,1 日のpH サイクルの回数は9 回とした。脱灰の評価は,実験開始前と開始後1 週毎に4 週までTransverse Microradiography(TMR)撮影を行い,得られた画像からミネラルプロファイルを算出し,Integrated Mineral Loss(IML)とLesion depth(Ld)を計測して乳歯,永久歯で比較した。その結果,乳歯,永久歯ともに週を経る毎にIML およびLd が増加し,各測定時間において有意差が認められた。また,乳歯は永久歯と比較して各測定時間においてIML, Ld が高く,有意差が認められた。このことから,以下の結論を得た。1 .乳歯,永久歯のIML およびLd の経時的増加から,両群に有意な脱灰変化が認められた。2 .乳歯は永久歯と比較してIML およびLd が有意に増加したことから,乳歯は永久歯よりも脱灰しやすいことが示された。3 .自動pH サイクル装置は乳歯においても,永久歯同様に脱灰,再石灰化を起こすことができることが示されたとともに,乳歯を用いた齲蝕研究に有用であることが示唆された。
  • 日本小児歯科学会障害児委員会, 種市 梨紗, 吉原 俊博, 鈴木 広幸, 梶本 祐一郎, 橋本 敏昭, 鈴木 康生, 五十嵐 清治, 福田 ...
    2010 年 48 巻 1 号 p. 56-63
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    小児歯科開業医における障害児歯科診療に関する実態について調査するために,日本小児歯科学会専門医認定医名簿(平成19 年3 月現在)上の1404 名の歯科医師へアンケートを送付し,該当する歯科医師450名(32.1%)より回答を得た。その結果,回答した小児歯科専門医や認定医は,臨床経験が26 年から30 年までの歯科医師が最も多く,臨床経験21 年から30 年までの歯科医師が,回答者の約半数(48.7%)を占めており,ベテランの小児歯科医師が,各地域で障害児も含め総合的に歯科医療を行っていることが示された。全患者数に対する障害児患者の割合は「1~5%未満」が最も多く,健常児との診療時間を分離している回答者は13.3%と少なかった。来院の動機は自意が最も多く,居住地は,「近所ではないが同じ市町村」が300 名で最も多かった。これらのことより,大部分の回答者が健常児と障害児の分け隔てなくかつ年齢の制限なく障害児に対して歯科医療を実践していた。本調査結果より,開業している小児歯科専門医や認定医は,障害児の口腔を健康に維持していくために障害児とその保護者が日常的に通い相談できる,かかりつけ歯科医の役割を果たしていることが示唆された。一方で,回答者に年齢的な偏りが認められ,現在活躍している小児歯科開業医から,その後身への障害児歯科診療の確実な継承に疑問が示され,今後,年齢間の情報・技術の伝達が重要になっていくと考えられた。
  • 日本小児歯科学会障害児委員会, 八若 保孝, 種市 梨紗, 吉原 俊博, 鈴木 広幸, 梶本 祐一郎, 橋本 敏昭, 鈴木 康生, 五十嵐 ...
    2010 年 48 巻 1 号 p. 64-72
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    小児歯科開業医における障害児歯科診療に関する実態,とくに各種連携と障害児診療の今後の課題について調査するために,日本小児歯科学会専門医認定医名簿(平成19 年3 月現在)上の1404 名の歯科医師へアンケートを送付し,該当する歯科医師450 名(32.1%)より回答を得た。その結果,小児歯科専門医や認定医の資格を有する小児歯科開業医での障害児歯科診療において,90.0%が紹介先の二次および三次医療機関を有しており,その多くは大学病院であった。しかし,障害者施設との連携がある歯科医はわずか19.1%であり,行政との連携がある歯科医についても24.4%にすぎず,障害者施設ならびに行政との連携はまだ不十分であることが示された。今回のアンケートを通して,小児歯科開業医での障害者歯科診療には,実態にあっていない保険制度,開業医での限界,地域差などの時間,コスト,体力,設備を代表とする多くの問題・課題が存在していることが示唆された。
  • 中村 光一, 野村 奈央子, 豊田 有希, 南川 元, 加我 正行, 八若 保孝
    2010 年 48 巻 1 号 p. 73-80
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    フッ素徐放性ブラケット接着材を用いてブラケットとヒトエナメル質の接着力をせん断接着強さ試験にて調べた。また,各接着材のフッ素のリリースならびにリチャージ性能を検討した。その結果,スーパーボンドオルソマイトの接着力が最も強く(16.7 MPa),フジオルソLC(14.2 MPa),クラスパーF(12.9 MPa),ビューティオーソボンド(10.1 MPa),ビューティオーソボンドサリバテクト併用(7.4 MPa)の順に接着力は低下した(N=12)。せん断接着強さ試験後の被着面歯質側のSEM 観察の結果,ビューティオーソボンドは,歯質表面は比較的滑沢であった。しかし,強い接着力を示したスーパーボンドオルソマイトとクラスパーF では,歯質表面にエナメル小柱構造が露出しており,歯質への損傷が認められた。フッ素のリリース量の測定では,測定1 日目に最も多くフッ素がリリースした。2 日目,3 日目と徐々に減少し,4 日目から7 日目まで平衡状態になった。グラスアイオノマー系ブラケット接着材のフジオルソLCからリリースするフッ素量が最も多かった。S-PRG フィラーを含有しているビューティオーソボンドがそれに続いた。フッ素のリチャージ後も同様の傾向を示した。以上の結果から,本実験で用いたフッ素徐放性ブラケット接着材は適度な接着力を示し,被着面歯質への影響が少なく,多量のフッ素のリリースならびにリチャージ能を有しており,臨床的に齲蝕誘発環境になりやすい矯正用装置接着に関して有効な材料であることが示された。
  • 丸谷 由里子, 門馬 祐子, 山田 亜矢, 岩本 勉, 小松 偉二, 福本 敏
    2010 年 48 巻 1 号 p. 81-89
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂児の齲蝕罹患状況と,当科で実施している唇顎口蓋裂児に対する早期齲蝕予防プログラムの効果を知る目的で,本調査を行なった。2 歳から8 歳までの唇顎口蓋裂児309 名を対象とした。そのうち204 名は,1 歳から3 歳までの早期齲蝕予防プログラムを受けていた。1 .乳歯に齲蝕罹患経験のある唇顎口蓋裂児は44.0%で,永久歯では11.7%であった。一人平均dft は2.0本,dfs は3.9 歯面,DFT は0.2 本,DFS は2.0 歯面であった。これらの値は,唇顎口蓋裂児に対する過去2 回の調査よりも低く,唇顎口蓋裂児の齲蝕が減少していることが示された。また,健常児と比較しても低い齲蝕罹患率であった。2 .裂型別の齲蝕罹患状況は,口蓋裂児が比較的早期から齲蝕に罹患していた。3 .上顎乳側切歯において,裂側が健側よりも齲蝕罹患率が高かった。4 .乳歯齲蝕罹患者率は早期齲蝕予防プログラムを受けた群(管理群)で33.8%であるのに対し,受けていない群(非管理群)では63.8%であった。また,管理群は一人平均dft が1.5 本,dfs が2.9 歯面,df 歯率が8.7%であり,非管理群は一人平均dft が3.1 本,dfs が6.0 歯面,df 歯率が19.7%で,管理群の齲蝕罹患率が有意に低かった。永久歯についても管理群の齲蝕罹患率が低かった。以上より,早期齲蝕予防プログラムの有効性が示された。
臨床
  • 福永 敏美, 松村 誠士, 玉川 秀樹, 仲村 有香, 保富 貞宏, 下野 勉
    2010 年 48 巻 1 号 p. 90-95
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    小児歯科臨床において,歯数の異常や歯の形態異常に遭遇することは少なくない。歯数の異常や歯の形態異常は歯列,咬合に影響を与え,機能的,審美的にも問題を生じることが多い。形態異常である双生歯は「正常歯と過剰歯の歯胚が1 つに融合したもの」と定義されている。双生歯が歯列不正や機能障害,審美障害の原因になっている場合,歯冠の形態修正,正常歯と過剰歯との分割,歯列への誘導などの処置を行う必要がある。そこで,正常歯と過剰歯の結合の状態,各々の歯髄の状態,スペースの有無など,総合的に検査し,双生歯に対する処置方法を選択,治療計画をたてることが重要である。今回,上顎前歯部に3 本の過剰歯および下顎右側中切歯と過剰歯との双生歯を呈する極めて稀な症例に遭遇した。双生歯はCT 撮影により下顎右側中切歯と過剰歯の歯髄が各々独立していることが確認されたため,下顎右側中切歯の歯根完成を待ち,下顎右側中切歯と過剰歯を分割して過剰歯の抜歯を行った。下顎右側中切歯は生活歯髄のまま保存することができ,さらに歯列への誘導を行うことによって機能的にも審美的にも良好な口腔内環境に導くことができたので報告する。
  • 棚瀬 精三
    2010 年 48 巻 1 号 p. 96-100
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    下顎両側乳中切歯が唇舌方向にほぼ水平に埋伏していたが,その後自然な萌出と歯軸の整直を認めたので報告する。患児は初診時,1 歳8 か月の女児で下顎両側乳中切歯の萌出遅延を主訴に来院され,下顎両側乳中切歯の唇舌方向へのほぼ水平な埋伏を認めた。授乳は1 歳3 か月に終了しており,おしゃぶり,吸指癖などの口腔習癖はなかった。初診時のエックス線診査から歯根の彎曲の有無については不明であったが,初診時の年齢から自然な萌出の可能性を期待して,開窓療法も行わず,しばらく口腔内写真により比較して経過観察することにした。2 歳5 か月時には,舌側歯肉での切端部による隆起の唇側方向への移動が認められた。2 歳8 か月時には,左側乳中切歯の萌出を認めた。さらに,3 歳2 か月時に右側乳中切歯の萌出を認めた。3 歳8 か月時には,左右乳中切歯ともにほぼ正常な歯軸に整直した。パノラマエックス線写真から,両側永久中切歯の発育状態に異常は認められなかった。本症例を診て,2 歳頃にみられる下顎両側乳中切歯の唇舌方向の水平埋伏は,自然萌出し歯軸も整直する可能性がある。そのためには,口腔習癖を確認し,できれば側貌エックス線写真により歯根彎曲を確認し,開窓療法も考慮に入れながら,歯肉歯槽内での歯軸の変化を口腔内写真により注意深く比較観察することが重要であることが示唆された。
  • 小松 偉二, 小笠原 克哉, 丸谷 由里子, 岩本 勉, 山田 亜矢, 福本 敏
    2010 年 48 巻 1 号 p. 101-108
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    今回,著者らは歯牙腫により萌出を妨げられた牽引困難な上顎左側犬歯を自家移植した症例を経験した。患児は,幼児期より定期的な口腔管理を受けていた。以前より上顎左側中切歯および側切歯の萌出遅延を気にしていた。9 歳3 か月から11 歳5 か月時に,上顎左側中切歯および側切歯に対し開窓術を施し,牽引処置を行った。12 歳7 か月時に,上顎左側乳犬歯が晩期残存しており,上顎左側犬歯の萌出を認めなかったため,エックス線撮影を行った結果,左側乳犬歯根尖部に歯牙腫様の境界明瞭な不透過像を認めた。埋伏している上顎左側犬歯尖頭部は,側切歯根尖部付近に存在し,歯根の完成度と歯牙腫様硬組織の存在から,上顎左側犬歯の牽引は困難と思われた。12 歳10 か月時に上顎左側乳犬歯を抜去後,口腔前庭部から左側犬歯および歯牙腫様硬組織を摘出し,直ちに犬歯の再植を行った。犬歯はワイヤーを用いて隣在歯と固定した。移植歯の骨植が安定した後に歯内療法を行い,14 歳8 か月時にレジン前装冠修復を行った。本症例から,再植歯が単根でかつ長い歯根を有することが再植に有利と考えられた。また歯牙腫による摘出窩が十分存在し,再植スペースを十分確保できたことも良好な経過が得られた理由と思われた。さらに,移植歯が完全埋伏しており,歯根が健全で無菌的に処置できた点が,移植の良好な経過に大きく関与したと考えられた。
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