歯の外傷による破折や治療に関しては完全な意見の一致を望むべくもないが,一般の臨床医が外傷を受けた子どもたちに最善の努力を尽くす場合には何らかの形で術式の基準化を図ることが望まれる。また,歯科のいかなる分野においても症例の分類がなされないかぎり,その分野の急速な進歩は望めない。そのような観点から,現在,大阪歯科大学小児歯科診療科で外傷患者に対して使用している外傷の診査表と分類図を提示し,日本外傷歯学会の「外傷歯治療のガイドライン」に沿って各分類の定義とその症例よる処置法について報告した。その結果,外傷歯治療は,十分なエビデンスの基づいた医療を行え得るものであろうかという疑問が考えられる。外傷歯治療は,エビデンスが乏しい処置であるため,推奨としてコンセンサスを形成することで留め,外傷症例の写真や解説などを提示するという患者向けガイドラインとして構成する方法もあると考えられる。そして,小児歯科学会として外傷歯治療のガイドラインをなるべく早期に作成し,会員や小児歯科専門医に提示して頂くことを希望しております。