小児歯科学雑誌
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総説
生活歯髄切断法における新規貼薬材料の検討
炭酸カルシウムの可能性について
荒井 清司
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2011 年 49 巻 3 号 p. 231-242

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抄録
炭酸カルシウムは生体と近似したpH でカルシウムを安定的に放出し,硬組織誘導促進効果が期待できる。炭酸カルシウムの歯髄への効果を明らかにするためin vitro においてヒト歯髄培養細胞の硬組織形成能促進に与える影響ならびにin vivo においてラット臼歯への生活歯髄切断法に炭酸カルシウムを用い歯髄切断の変化を検討した。ヒト歯髄培養細胞に炭酸カルシウムを12 日間作用させた際の反応を検討した。なお作用させていない細胞をコントロールとした。炭酸カルシウムの細胞毒性は認められなかった。細胞増殖試験,ALP 染色およびALP 活性において10 mM 炭酸カルシウム群で高い細胞増殖とALP 濃染像と高いALP 活性が認められた。ラット臼歯歯髄に生活歯髄切断法を行い,術後1 日で炭酸カルシウム群は歯髄切断下に壊死層は認めず,水酸化カルシウム群は,歯髄切断下に壊死層が認められた。術後28 日で両群ともにマイクロCT およびH.E.重染色で象牙質様硬組織の形成が認められた。炭酸カルシウム群はnestin 陽性細胞が切断後に水酸化カルシウム群よりも早く出現し,歯髄が石灰化することが明らかとなった。DMP-1 免疫染色では両群とも術後28 日まで,DMP-1 免疫反応陽性マトリックスの量が増加していた。OPN 染色では両群とも術後28 日目においてOPN 免疫反応陽性細胞が認められた。炭酸カルシウムは,生体親和性に優れた性質を有し,歯髄切断直下に新生象牙質様硬組織を誘導することが示唆された。
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© 2011 日本小児歯科学会
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