小児歯科学雑誌
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原著
小児唾液中クロモグラニンAを指標としたストレス評価に関する研究
大塚 愛美佐貫 左知緒菊池 元宏伊平 弥生栗山 千裕朝田 芳信
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2012 年 50 巻 1 号 p. 43-50

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抄録

近年,唾液中クロモグラニンA(以下,CgA)がストレスマーカーとして注目されているが,否定的な報告も散見する。そこで著者らは男児88 名,女児90 名へのシーラント処置を通し,このCgA 値がFrankl's Behavior Rating Scale と関連があるのか,そして臨床の場で簡便に応用できるのか検討するためのパイロット研究を実施した結果,以下の結論を得た。1 .CgA 値は[処置10 分前]が17.560±12.544,[処置直前]が16.075±13.019,[処置10 分後]が11.764±10.239 pmol/mg protein であった。また,[処置直前]と[処置10 分後]ならびに[処置10 分前]と[処置10 分後]間に有意な差が認められた。なお,男女差は認められなかった。2 .CgA 値と年齢との相関を求めたところ,[処置10 分前]と[処置直前]において年齢とCgA 値との間に有意な負の相関が認められた。3 .CgA 値と日内変動について有意な関係は認められなかった。4 .CgA 値とFrankl's Behavior Rating Scale との間に有意な相関は認められなかった。CgA は精神的ストレスを反映する傾向があるものの不安定であり,採取条件の統一を臨床現場で高度に達成するのは極めて難しく,現時点でストレスマーカーとしてのCgA の単独臨床応用は時期尚早と思われる。

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© 2012 日本小児歯科学会
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