抄録
本研究はTooth erosion における乳歯,永久歯エナメル質の脱灰-再石灰化時の反応性,950 ppmF フッ化ナトリウム溶液の応用による効果の差を明らかにすることを目的として,pH サイクリング法にて実験を行なった。被験歯にはヒト乳臼歯20 歯およびヒト小臼歯20 歯を用いた。1 回のサイクリングは22 時間とし,再石灰化液(2 時間,pH 7.0)に浸漬後,脱灰液(5 分,pH 3.0),再石灰化液(6 時間30 分,pH 7.0)の工程を3回反復したものをフッ化物未処理群とし,フッ化物処理群では脱灰液と再石灰化液の間にフッ化ナトリウム溶液(3 分,950 ppmF)による処理を追加した。脱灰-再石灰化の評価は,各液のリン濃度より算出されたミネラル変化率(vol%)にて行った。その結果より以下の結論を得た。1 .乳歯,永久歯のミネラル変化率の比較において,フッ化物未処理群では,脱灰,再石灰化時ともに反応性に差は認められなかった。フッ化物処理群では,脱灰時に差は認められないものの,再石灰化時において乳歯は永久歯よりも有意に高い反応性を示すことが明らかになった。2 .1 サイクリング中における総ミネラル変化率において乳歯,永久歯共にフッ化物未処理群とフッ化物処理群の間に有意な差が認められた。しかし,乳歯,永久歯のフッ化物未処理群間,フッ化物処理群間に差は認められなかった。以上の結果よりTooth erosion を想定したpH 3.0 脱灰液を用いた再石灰化前の950 ppmF フッ化物溶液の応用は乳歯,永久歯の両者で脱灰の抑制よりも,再石灰化の促進を通じて,脱灰-再石灰化のバランスを保つことが示唆された。