小児歯科学雑誌
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50 巻 , 4 号
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原著
  • 嘉手納 未季, 杉山 智美, 校條 愛子, 浅里 仁, 神谷 太郎, 島田 幸惠, 板橋 家頭夫, 井上 美津子
    2012 年 50 巻 4 号 p. 275-282
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    近年,小児のアレルギー患者が増加しているが,歯科治療時におけるアレルギー症状の発現に対する予測や対応法などは確立していない。当科では,本学医学部小児科と連携をとり,重度のアレルギーを持つ小児や多種のアレルゲンに反応する小児に対して,アレルギー検査を行っている。今回,当大学での局所麻酔薬に対するアレルギー検査を行った60 名について報告する。アレルギー検査はオーラ注(46 名),シタネスト(25 名),シタネスト・オクタプレシン(13 名),スキャンドネスト(34 名)の4 種に対して行った。当大学小児科にアレルギー検査を依頼し,皮内テストで行った。1 .既往歴で最も多かったのは,食物に対するアレルギーの既往であり,34 名であった。具体的には鶏卵,牛乳やピーナッツなどに対してアレルギー症状を呈する小児が多かった。次いで気管支喘息,アトピー性皮膚炎の順で多かった。2 .検査を行った理由として最も多かったのは,「多種のアレルゲンに反応する」ためであり,35 名であった。3 .4 種の局所麻酔薬に対してのアレルギー検査の結果では,それぞれの薬剤にアレルギー反応を呈する者がみられたが,全ての薬剤にアレルギー反応を示した小児は1 例のみであった。アレルギーのある患者に対して,医療面接から全ての局所麻酔薬についてのアレルギーを予測することは困難である。しかし,事前の医療面接である程度予測して検査に結びつけることは意義があると思われた。
  • 鈴木 美衣, 外山 敬久, 小野 俊朗, 福田 理
    2012 年 50 巻 4 号 p. 283-287
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    舌小帯異常による障害を改善する方法の一つとして舌小帯切除があり,切除を行う時期・基準に関して様々な報告がみられるが,一定の基準は確立されていない。今回著者らは,平成20 年度から平成22 年度までに舌小帯異常を主訴に来院した36 名に対し,実態調査を行い,以下の知見を得た。1 .初診時年齢は5 歳で最も多く,0 歳から10 歳の間で来院していた。男女比はほぼ同じであった。2 .来院動機は,医師・歯科医師からの指摘が多かった。3 .舌小帯異常を主訴に来院した患者のうち,紹介状を持参した者は66.7%であった。4 .舌小帯異常に関連する症状の訴えとして,構音障害が多かった。5 .切除時年齢は5 歳が最も多く,4 歳から切除を行っていた。3 歳以下は経過観察であった。6 .紹介状を持参した者は,持参しなかった者に比べて切除実施率が高かった。7 .切除方法は局所麻酔下でEr : YAG レーザーの使用が多かった。
  • 王 陽基, 中野 崇, 榊原 章一, 加藤 一夫, 福田 理
    2012 年 50 巻 4 号 p. 288-296
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究はTooth erosion における乳歯,永久歯エナメル質の脱灰-再石灰化時の反応性,950 ppmF フッ化ナトリウム溶液の応用による効果の差を明らかにすることを目的として,pH サイクリング法にて実験を行なった。被験歯にはヒト乳臼歯20 歯およびヒト小臼歯20 歯を用いた。1 回のサイクリングは22 時間とし,再石灰化液(2 時間,pH 7.0)に浸漬後,脱灰液(5 分,pH 3.0),再石灰化液(6 時間30 分,pH 7.0)の工程を3回反復したものをフッ化物未処理群とし,フッ化物処理群では脱灰液と再石灰化液の間にフッ化ナトリウム溶液(3 分,950 ppmF)による処理を追加した。脱灰-再石灰化の評価は,各液のリン濃度より算出されたミネラル変化率(vol%)にて行った。その結果より以下の結論を得た。1 .乳歯,永久歯のミネラル変化率の比較において,フッ化物未処理群では,脱灰,再石灰化時ともに反応性に差は認められなかった。フッ化物処理群では,脱灰時に差は認められないものの,再石灰化時において乳歯は永久歯よりも有意に高い反応性を示すことが明らかになった。2 .1 サイクリング中における総ミネラル変化率において乳歯,永久歯共にフッ化物未処理群とフッ化物処理群の間に有意な差が認められた。しかし,乳歯,永久歯のフッ化物未処理群間,フッ化物処理群間に差は認められなかった。以上の結果よりTooth erosion を想定したpH 3.0 脱灰液を用いた再石灰化前の950 ppmF フッ化物溶液の応用は乳歯,永久歯の両者で脱灰の抑制よりも,再石灰化の促進を通じて,脱灰-再石灰化のバランスを保つことが示唆された。
臨床
  • 増田 啓次, 中村 志保, 松石 裕美子, 西垣 奏一郎, 山座 治義, 柳田 憲一, 野中 和明
    2012 年 50 巻 4 号 p. 297-303
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    九州大学病院小児歯科外来において,下顎乳臼歯部舌側歯肉に歯胚様組織を含む腫瘤を生じた1 例を経験したので報告する。患児は2 歳11 か月の男児で,D舌側歯肉に径10 mm×5mm,高さ5mmの広基性かつ弾性硬の腫瘤を認めた。同部のエックス線検査では,乳歯,永久歯胚および顎骨を含め,異常な透過像もしくは不透過像は認めなかった。本腫瘤は歯肉に限局する非腫瘍性病変であると判断し,臨床診断をエプーリスとして,全身麻酔下にて腫瘤を切除した。切除した腫瘤の病理組織所見では,歯肉粘膜下に線維性結合組織で包まれた,初期歯胚に類似する組織を複数個認めた。この所見は周辺性歯牙腫または過剰歯との関連を示唆するものであった。しかし,本症例では明らかなエナメル質や象牙質の形成を認めなかった点から,過剰歯胚と診断した。腫瘤切除後4 年を経過した現在まで,再発は認めていない。
  • 棚瀬 精三, 棚瀬 康介
    2012 年 50 巻 4 号 p. 304-312
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    上顎永久中切歯の萌出位置の異常を主訴に来院し,矯正力を作用させても,全く歯の移動が認められなかった2 症例を経験した。そこで,2 症例とも骨性癒着歯と判断し,癒着部位を分離することを目的に歯を亜脱臼させ,直に牽引移動を行った。亜脱臼は歯が垂直方向に約1mm可動する程度に行った。1 例は1 回の亜脱臼のみで,もう1 例は2 回の亜脱臼を行った。2 例とも歯の移動量は亜脱臼時の可動量をわずかに超えたが,再癒着がみられた。萌出量の不足分はレジン全部被覆冠修復で補った。亜脱臼を2 回行った症例は,牽引治療後6 か月時に根尖性周囲組織炎を来し,根管治療を行うも歯根の外部吸収が進行し,2 年9 か月後には保存不可能のため抜歯に至った。亜脱臼を1 回のみ行った症例は,2 年8 か月経過時,歯根の骨置換性外部吸収がみられるものの疼痛などの炎症症状は認められなかった。骨性癒着歯に対する亜脱臼後の移動治療は,順調に行えるという報告もあるが,本症例のように亜脱臼させても十分な移動は期待できないこと,あるいは骨置換性外部吸収が進み,脱落の可能性もあることも考慮に入れてインフォームド・コンセントを行うことが重要であると思われた。さらに,2 例とも永久歯に直接的な外傷の既往はないが,先行乳歯の外傷や抜歯の既往があり,永久前歯の骨性癒着には,乳歯の外傷や抜歯という外力が永久歯胚の歯根および周囲組織を損傷し,誘因となることの可能性が示唆された。
  • 井出 正道, 小串 信夫, 朝田 芳信
    2012 年 50 巻 4 号 p. 313-319
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    X 連鎖性低リン血症性くる病は稀な遺伝性疾患であり,口腔内所見として齲蝕のない乳歯に歯肉膿瘍を形成することがある。今回,X 連鎖性低リン血症性くる病の男児に対して,乳歯列期から永久歯咬合完成期まで長期にわたり歯科的管理を行ったので,その経過を報告する。患児は初診時年齢2 歳1 か月の男児で,Aの疼痛と歯肉腫脹を主訴に来院した。Aには齲蝕が認められたが,根尖性歯周炎を生じるほどの重度の齲蝕ではなかった。歯根吸収と歯周組織の破壊がほとんどなかったため,感染根管処置を試みた。その後,合計17 歯の乳歯に歯肉膿瘍の形成がみられ,それらのうち2歯は抜歯の適応となったが,15 歯に感染根管処置を施した。15 歯のうち4 歯には,根管充填後再度歯肉膿瘍の形成がみられた。再度歯肉膿瘍のみられた乳歯に対しては,再度感染根管処置を試みた結果,感染根管処置を施した乳歯は全て,永久歯への交換期まで機能させることができた。永久歯には齲蝕予防処置を行い,齲蝕や歯肉膿瘍が発生することなく,健全な永久歯列へと誘導できた。低リン血症性くる病で乳歯に歯肉膿瘍が生じた場合でも,歯根吸収や歯周組織の異常が軽度である場合は,抜歯を選択する前に感染根管処置を行うことは有効な治療法であると考えられた。
  • 比嘉 和, 馬場 篤子, 小笠原 榮希, 石井 香, 尾崎 正雄
    2012 年 50 巻 4 号 p. 320-325
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    第一大臼歯の埋伏する頻度は極めて低く,その治療経過に対する報告も数少ない。今回,我々は下顎左側第一大臼歯埋伏症例に開窓および牽引治療を施し,長期育成治療を行った。患児は,9 歳6 か月の男児で下顎左側第一大臼歯の埋伏を主訴として福岡歯科大学医科歯科総合病院小児歯科に紹介で来院した。エックス線所見では,下顎左側第一大臼歯は,下顎左側第二大臼歯の歯胚よりも低位に埋伏しており,歯根は未完成で,骨性癒着などの異常所見は観察されなかった。開窓術を施行し,牽引を開始した結果,術後2 年5 か月で,萌出を完了した。その後約7 年間,咬合育成を行い良好な咬合関係を獲得することが出来た。本症例のように治療によって萌出誘導が期待できる埋伏歯には,埋伏歯の成長・発育や隣在歯への影響を考慮しながら,適切な治療計画のもとに牽引誘導処置を早期に行うことが重要であると考えられた。
  • 山川 佳代, 中野 崇, 大塚 章仁, 徳倉 健, 丹羽 雅子, 福田 理
    2012 年 50 巻 4 号 p. 326-332
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    神経症は,患者を取り巻く環境や患者自身の性格的な問題を背景とした心の葛藤を原因とする精神障害とされており,心理的な背景を基に,身体症状を訴えて歯科を受診することがある。著者らは神経症に起因すると思われる口腔内症状を訴えて来院した患児を経験した。患児は5 歳9 か月の女児で歯の痛みと咬合異常感を主訴に来院した。4 歳頃,精神科にて小児神経症の診断を受けていた。咀嚼時,就寝前に激しい疼痛を訴えたため,近在の歯科を受診した。担当医師より,痛みの原因となる所見はないこと及び左側乳歯側方歯群の交叉咬合を指摘された。その後,経過観察を行うも痛みが改善しないため,精査,治療を目的に当科を紹介受診した。治療では患児,保護者に対し受容的,支持的な対応を心がけた。患児,保護者との信頼関係が築けたところで認知療法的アプローチおよび咬合誘導治療を実施したところ,良好な結果を得た。このことから,精神的な不安が強い小児の対応に当たっては,患者の言動の背景に不安が存在することを常に考慮し,患児の訴える疼痛に対する診断・対応は歯科医師のみで行わず,精神科との連携が重要であると考えられた。
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