小児歯科学雑誌
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ISSN-L : 0583-1199
原著
高精度モーションキャプチャシステムを用いた刷掃動作の解析
余 永冨山 大輔稲田 絵美齊藤 一誠武元 嘉彦村上 大輔森園 健下田平 貴子福重 雅美北上 真由美山﨑 要一
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2014 年 52 巻 4 号 p. 501-508

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抄録

歯面の刷掃時に推奨されている歯ブラシの把持法はペングリップとパームグリップが主流である。我々はこれまでペングリップについて,歯科衛生士の刷掃時の上肢や歯ブラシの動きについて検討し,固有の運動リズムの存在や,上肢各関節の協調運動の重要性について明らかにしてきた。歯面の刷掃は動きの安定性や協調性が必要な事から,運動機能が未熟な低年齢児にはペングリップが困難である可能性が推測される。一方パームグリップは,その把持の簡便さから,加齢や疾患により手指筋力が低下している患者に対しても適用される場合もある。本研究では上記2 種類の把持法で刷掃する際の,上肢各関節と歯ブラシの動きについて比較し,以下の結論を得た。1 .ペングリップとパームグリップともに歯ブラシの往復運動に固有の安定したリズムが存在していた。2 .頬側,口蓋側とも上顎右側はペングリップが,上顎左側はパームグリップが,各関節間の協調性がより高い可能性が示唆された。3 .ペングリップでは各関節の安定した運動が関節の協調運動に反映されるのに対し,パームグリップでは関節の協調運動に各関節の運動の安定性は必ずしも求められない可能性が示された。以上より,両把持法について動作の点で検討すると,パームグリップの方が歯ブラシの往復運動を営むための難易度が低い可能性があると考えられた。

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© 2014 日本小児歯科学会
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