抄録
多様な障害を引き起こす上顎前歯部埋伏過剰歯の抜歯時期の明確な基準は未だない。そこで,著者らは被ばく量の少ないパノラマエックス線写真上である程度の位置情報を入手することを目的として,2013年10月から2014年3月の5か月間にA小児歯科医院を受診し,抜歯が必要と診断され,術前に歯科用コンビームCT(以下CBCT)を撮影した31 例40 歯を対象に臨床的研究を行った。その結果,上顎前歯部埋伏過剰歯の出現頻度は7対2で男児に高く,萌出方向は順生が17歯,逆生が23歯であった。埋伏過剰歯数は1歯が22例,2歯が9例であった。撮影時平均年齢は7.6(±1.1)歳であった。また,パノラマエックス線写真上の埋伏過剰歯位置について,鼻腔底下縁から上顎歯槽骨頂までを3分割し,鼻腔底下縁からType I〜IIIとして垂直的深度を評価した。この結果,Type Iは5 歯,Type IIは26 歯,Type IIIは9歯であった。同様に,CBCTデータの矢状面断における埋伏過剰歯の位置を同じく3分割し,それぞれPosition 1〜3として3次元的位置深度を評価した。その結果,Position 1が8歯で,Position 2が23歯で,Position 3が9歯であった。一方,CBCT上とパノラマエックス線写真上の上顎前歯部埋伏過剰歯の位置とは,92.5%の割合で一致しており,これら2群間の統計学的検定を行った結果,両者間に相関があることが認められた。以上の結果から,パノラマエックス線写真上での深度分類が,上顎前歯部埋伏過剰歯抜歯の際に重要な判断基準となりうるものと推察される。