小児歯科学雑誌
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53 巻 , 1 号
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総説
  • 菊入 崇
    2015 年 53 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    ビスホスホネート(Bisphosphonate : BP)は,過去30 年以上に亘り,骨粗鬆症などの骨脆弱を特徴とする骨疾患の予防と治療に用いられている薬剤である。近年,BP 系薬剤の副作用として,BP 系薬剤長期服用者の抜歯などの外科処置後に,特徴的な顎骨壊死(Bisphosphonate-Related Osteonecrosis of the Jaw :BRONJ)を発症することが報告されている。この疾患は症状が重篤であり極めて難治性であるが,長らく発生機序が不明であった。そのため,いまだに有効な治療法は確立されていない。我々はBRONJ 症状を呈するマウスを用いてBRONJ の発症機序について検討を行った。その結果,BRONJ の発症には免疫細胞の不均衡が強く関与していることを明らかにした。本稿では,BRONJ の発症機序における免疫細胞の関与について考察したい。
  • 清水 武彦
    2015 年 53 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    齲蝕は世界で最も一般的にみられる多因性,慢性の疾患であり,齲蝕感受性に影響する遺伝要因については未だ明らかとなっていない。過去の齲蝕感受性の遺伝要因の全染色体スクリーニングでは5座位が示唆されており,5q13.3, 13q31.1, 14q11.2, 14q24.3 およびXq27 の染色体領域である。本研究ではこれらの中で第5番染色体の5q13.3領域の詳細なマッピングを行った。フィリピンに住む文化的,行動的習慣が近似した72家族477人を対象に一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism : SNP)分析を行った。また,異なる5集団1446人において齲蝕経験をもとに反復実験を行った。5q13.3領域において齲蝕経験と関連のある3遺伝子を検出し,他の集団とも結果は重複した。加えて,同じ被検者においてエナメル質形成に関与する遺伝子のSNP分析を行った。齲蝕経験と最も強い関連を示したのはアメロゲニン遺伝子であった。これらの結果より,第5番染色体5q13.3領域内の遺伝子およびアメロゲニン遺伝子が齲蝕感受性に関与している可能性が示唆された。
  • 岡 暁子
    2015 年 53 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    口蓋裂は,高頻度で発症する顔面奇形である。口蓋裂を伴って出生すると,哺乳障害に始まり咀嚼および発音機能,審美性の回復など様々なハードルを超えなくてはならない。治療は複雑で長期に及ぶため,各ステップで臨床専門家によるチームアプローチが必至である。我々小児歯科医は,このチームの一員として大変重要な立場にいる。一方で,口蓋裂という疾患を考えるとき,この疾患の病因を明らかにする基礎的研究もまた,忘れてはならない。ヒトにおける口蓋裂の裂形は,完全口蓋裂・口唇裂や歯槽裂を伴うもの,軟口蓋裂でも粘膜下口蓋裂や二分垂裂など多様である。我々は,ヒト口蓋裂疾患の中でも,軟口蓋裂発症メカニズムの解明を目的とし,特に軟口蓋発生に着目して解析を行ってきた。口蓋発生初期には,口蓋間葉は神経堤細胞によって形成されている。軟口蓋領域には遅れて,中胚葉由来の骨格筋細胞が遊走し,2 つの細胞間相互作用によって口蓋筋群が形成される。我々は,まず,軟口蓋領域に特徴的に発現する遺伝子を網羅的に解析するため,口蓋組織前後でのマイクロアレイによる比較解析を施行した。その中から細胞外基質であるPeriostin に着目し,組織学的な発現解析を行い,軟口蓋領域の神経堤細胞には,Periostin の発現が特徴的に発現していること,またこの発現は,TGF-β シグナルによって制御されていることを明らかとした。
原著
  • 佐野 哲文, 立花 太陽, 小出 明子, 渡邊 淳一, 龍田 恒康, 佐野 正之, 嶋田 淳
    2015 年 53 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    多様な障害を引き起こす上顎前歯部埋伏過剰歯の抜歯時期の明確な基準は未だない。そこで,著者らは被ばく量の少ないパノラマエックス線写真上である程度の位置情報を入手することを目的として,2013年10月から2014年3月の5か月間にA小児歯科医院を受診し,抜歯が必要と診断され,術前に歯科用コンビームCT(以下CBCT)を撮影した31 例40 歯を対象に臨床的研究を行った。その結果,上顎前歯部埋伏過剰歯の出現頻度は7対2で男児に高く,萌出方向は順生が17歯,逆生が23歯であった。埋伏過剰歯数は1歯が22例,2歯が9例であった。撮影時平均年齢は7.6(±1.1)歳であった。また,パノラマエックス線写真上の埋伏過剰歯位置について,鼻腔底下縁から上顎歯槽骨頂までを3分割し,鼻腔底下縁からType I〜IIIとして垂直的深度を評価した。この結果,Type Iは5 歯,Type IIは26 歯,Type IIIは9歯であった。同様に,CBCTデータの矢状面断における埋伏過剰歯の位置を同じく3分割し,それぞれPosition 1〜3として3次元的位置深度を評価した。その結果,Position 1が8歯で,Position 2が23歯で,Position 3が9歯であった。一方,CBCT上とパノラマエックス線写真上の上顎前歯部埋伏過剰歯の位置とは,92.5%の割合で一致しており,これら2群間の統計学的検定を行った結果,両者間に相関があることが認められた。以上の結果から,パノラマエックス線写真上での深度分類が,上顎前歯部埋伏過剰歯抜歯の際に重要な判断基準となりうるものと推察される。
  • 木舩 敏郎, 増田 啓次, 山座 治義, 野中 和明
    2015 年 53 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    トモシンセシスパノラマエックス線撮影装置を使ったエックス線写真は,3D空間マッピング技術から,エックス線像の焦点の合った任意の二点間を立体的に計測できる。下顎永久前歯が萌出し下顎乳側方歯の揃った小児の石膏模型の歯冠幅径をSV(standard value)とし,トモシンセシスパノラマエックス線写真(TSPX)の歯冠幅径の測定値MV(measurement value)を求めた。歯種ごとに補正率αα =SV/MV)を計算し,測定精度を比較した。TSPXの未萌出側方歯幅径に,先行乳歯のαを乗じて予測した測方歯群長を,小野の回帰方程式やモイヤースの予測表と比較した。下顎歯冠幅径MVは臼歯部ではSVより拡大する傾向に,犬歯と前歯では縮小する傾向にあった。女児の左側以外,TSPXから予測した下顎の側方歯群長と,小野の回帰方程式やモイヤースの予測表50パーセンタイル値には有意差が無かった。TSPXを使った側方歯群長の予測は,個人のばらつきを表現できる点で,歯群間の相関を使用した回帰方程式や予測表より評価できる可能性が示唆された。
  • 筒井 廉, 今井 獎, 花田 信弘, 朝田 芳信
    2015 年 53 巻 1 号 p. 35-46
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    エナメル質初期齲蝕のより有効な再石灰化方法の開発を目的として,再石灰化促進効果のあることが知られているリン酸化オリゴ糖カルシウム(POs-Ca)と,各種フッ化物の組み合わせによる効果を,定量的光誘導蛍光装置(QLF)とミネラル分析の常法である定量的マイクロラジオグラフィー(TMR)で評価した。牛歯エナメル質試料を2 週間脱灰させ,8 種類の再石灰化溶液に試料を各々37℃で1 週間再石灰化後,QLF にて再石灰化後の平均脱灰深度(ΔΔF),再石灰化後の平均脱灰量(ΔΔQ)および再石灰化後の脱灰歯面の面積(ΔWS area)を求めた。その後TMR にてミネラル喪失量(ΔZ)および脱灰深度(ld)による再石灰化率(ΔZREM 率,ldREM 率)を算出した。QLF によるΔΔF, ΔΔQ, ΔWS area と,TMR によるΔZREM 率のすべての結果において,対照群に対して有意に高い再石灰化を認めたのは,人工唾液にPOs-Ca と緑茶由来のフッ化物(1.2 ppmF)を配合したCPF 群のみであった。また,各種フッ化物の比較では有意差はなかったものの,CPF 群の再石灰化率が高い傾向にあった。
  • 竹松 翠, 山田 早希子, 栗原 亜由希, 杉山 智美, 浅里 仁, 馬谷原 光織, 佐藤 昌史, 井上 美津子
    2015 年 53 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    ストレスの要因となりうる小児の歯科治療に対する恐怖や不安の原因を解明するため,本研究では3 ~12 歳の小児84 名(男児45 名,女児39 名)を対象に,チェアーサイドで簡易型唾液α-アミラーゼ値測定器を使用し,治療前後の唾液中のα-アミラーゼの測定を行った。測定結果と診療との関連について検討し,下記の結果を得た。1 .診療前後の唾液中のAml 値は個人差があり,ばらつきも多かったが,全体的に診療後に下降したものが多かった。2 .年齢によるAml 値の変化は,有意差はないが,6~12 歳では診療後に上昇するものがやや多くみられた。3 .診療時間帯によるAml 値の変化は,上昇するものの割合が午前よりも午後の方が多く,午前の方が下降するものの割合は有意に多かった。4 .診療時間や診療内容によるAml 値の変化はあまり認められなかった。5 .浸潤麻酔の有無によるAml 値の変化については,有意差はなく,麻酔を使用しても必ずしもAml 値の上昇はみられなかった。6 .日常の性格によるAml 値の変化については,有意差はないが,おとなしいものは活発,普通に比べ上昇したものがやや少なく,下降したものがやや多かった。これらのことから,診療時間帯,浸潤麻酔の使用に際しての配慮,患児の年齢や性格などを考慮した対処が必要と考えられ,今後の歯科的対応に活用していく必要性が示唆された。
  • 木村 洋子, 富永 真澄, 坂下 かやの, 河田 正江, 堀川 康弘, 浅里 仁, 井上 美津子
    2015 年 53 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    病診連携のさらなる向上を図ることを目的として,2012 年1 月1 日から2013 年12 月31 日までの2 年間に歯科診療所あるいは一般病院からの診療情報提供書あるいは紹介状を持参して本学小児歯科外来に来院した初診患者(男児550 名,女児402 名の計952 名)について集計・分析を行った。その結果,1 .紹介患者年齢は,7 歳代が最も多く,0 歳代から8 歳代が約8 割を占めていた。2 .紹介元施設の多くが歯科診療所であり,9 割以上であった。3 .年齢別紹介理由では0~6 歳では齲蝕が多く,7 歳以上では萌出の異常が多かった。4 .地域別紹介内容では,齲蝕は近隣からの紹介が多く,萌出の異常は遠方からの紹介が多かった。外傷は地域による差は認められなかった。5 .地域別紹介年齢では,12 歳以下では地域による差は認められなかったが,13 歳以上では地域差が多く認められた。これらの結果から,紹介年齢や紹介理由には地域による差が認められ,その傾向は2002 年と2008 年の当科の報告と異なっていた。このことからも,当科が求められている状況を素早く把握するとともに,近隣歯科医院との綿密な連携を行うことが,歯科大学病院小児歯科として今後も重要であると考えられた。
  • 本城 孝浩, 森川 和政, 佐伯 桂, 長尾 怜美, 秀島 治, 牧 憲司
    2015 年 53 巻 1 号 p. 60-68
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    近年子どもの口唇閉鎖や舌の働きに関する様々な報告がされているが,開咬児に着目されたものは少ない。そこで今回,本学付属病院小児歯科外来を受診した8 歳から11 歳までの正常咬合児15 名ならびに開咬児15 名を対象として多方位口唇閉鎖測定装置による口唇閉鎖力の測定,簡易型舌圧測定装置を用いた舌圧の測定,アンケートによる聞き取り調査を行い,開咬児の小児期における口唇閉鎖力の特性ならびに舌の働きについて検討した。正常咬合児,開咬児の両群の口唇閉鎖力の比較では,8 つのチャンネルのうち鼻下における1 点について開咬児の口唇閉鎖力は正常咬合児に比べ有意に弱い結果が得られた。この結果から,開咬児は上口唇の閉鎖機能が弱く,口唇が閉鎖しにくい可能性が示唆された。また,舌圧の測定からは,正常咬合児,開咬児の両群に有意差は見られなかった。口蓋への舌挙上の運動についても,正常咬合児と開咬児は類似している事が示唆された。アンケートの結果からは,開咬児は口が開きやすく,鼻と口で呼吸する傾向があることがあきらかになった。
  • 小倉 英稔, 佐野 祥美, 近藤 亜子, 近藤 俊, 田村 康夫
    2015 年 53 巻 1 号 p. 69-80
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,口唇口蓋裂児における口唇形成術施行前後と術後3 か月時における吸啜機能の変化について,吸啜圧,吸啜サイクル時間および口腔周囲筋活動から検討したものである。被検児は,F 保健衛生大学病院に通院中の片側性完全唇顎口蓋裂児12 名である。計測は,口唇形成術前後,術後3 か月の計3 回行い,吸啜運動時の吸啜圧変化と口腔周囲筋活動を計測した。吸啜圧は計測用哺乳瓶を,口腔周囲筋活動は,左右側頭筋(L-R, TM)と咬筋(L-R, MM),唇裂の部位とは反対側(健側)の口輪筋(OM),舌骨上筋群(SM)の6 筋に双極表面銀電極を貼付し記録した。コントロールとして,3 か月の健常乳児に同様の観察を行った母乳群と人工乳群を用いた。その結果,糖液哺乳時の1 吸啜サイクル時間と陰圧相時間は,術後の方が術前に比べ有意に長くなった(p<0.05)。口腔周囲筋活動は両側TM, OM および総筋活動量は,術前に比べ術後の方が有意に増大していた(p<0.05)。吸啜圧は口唇形成術後3 か月が術前に比べ大きくなっていた(p<0.05)。口唇口蓋裂児の3 か月後とコントロール群との比較ではSM は3 か月群がコントロール2 群に比べ有意に小さい値を示した(p<0.05)。以上より,口唇形成術を施行した結果,吸啜サイクルの陰圧相時間は長くなり,口腔内の陰圧形成に有効であることが明らかとなった。しかし,口唇口蓋裂児のSM の活動は口唇形成術後も小さく,舌の動きが健常乳児とは異なっていることが示唆された。
臨床
  • 松崎 祐樹, 内川 喜盛, 星山 紘子, 新見 嘉邦, 白瀬 敏臣
    2015 年 53 巻 1 号 p. 81-88
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    気管挿管による極・超低出生体重児の口腔内への影響は多数報告されているが,本邦における報告例は少ない。また,乳児期の気管挿管による口腔内への影響は,歯の萌出後にわかる軽度なエナメル質形成不全や成長発育のcatch-up により症状が緩和された状態が多く,初めて歯科医院に来院する時期には認知されにくい。今回我々は,気管挿管の影響によると考えられた上顎左側乳前歯の萌出不全,エナメル質形成不全および前歯部交叉咬合を認めた1 例を経験した。患児は,超低出生体重児であり,3 か月にわたり気管挿管を行っていた。初診時の口腔内は上顎左側乳中切歯,乳側切歯,乳犬歯の萌出不全および反対側前歯部の交叉咬合を認め,全身麻酔下において開窓,歯牙腫様硬組織の摘出を行った。その後,乳前歯の萌出を認め,経過観察とともに交叉咬合の改善が認められた。一方,歯牙腫様硬組織は乳側切歯の重度のエナメル質形成不全であり,萌出した乳中切歯および乳犬歯にもエナメル質形成不全が認められた。本症例は,局所的な異常であり,その部位が挿管と関連した部位であることから,新生児期の気管挿管の影響によるものと考察した。以上のことから,気管挿管を行った極・超低出生体重児においてはエナメル質形成不全,交叉咬合,口蓋の形態異常などを認める可能性があり,症例に応じた適切な対応・処置が肝要であると考えられた。
  • 砂田 怜子, 青木 望, 小尾 友美, 澤本 圭南子, 宮本 桃江, 松根 健介, 清水 武彦
    2015 年 53 巻 1 号 p. 89-94
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル フリー
    13トリソミー症候群は,第13番染色体が1本過剰な先天異常症候群である。本症候群は1歳までに95%が死亡し,生命予後が極めて不良な症候群であるため,口腔所見を検討した報告が少ない。歯科領域からの報告では,口唇口蓋裂,狭口蓋,第三大臼歯の高頻度欠損,上顎犬歯の転位,矮小歯,下顎後退,側方臼歯部交叉咬合,多量の歯垢蓄積,全顎的な歯肉炎がみられる。13トリソミーの20%は13番染色体の部分トリソミーであり,13部分トリソミーの歯科所見の報告はない。今回,我々は13部分トリソミーの女児の歯科治療を経験したので報告する。患児は14歳であり,歯列不正を主訴に来院した。本症例は10歳時に某県立こども病院遺伝科にて13部分トリソミーと診断された。咬合誘導と多数歯の齲蝕治療を行い,その後齲蝕の発症を予防するため口腔衛生指導を行った。患児の口腔所見として,これまで13トリソミーで報告されている第三大臼歯の欠損,上顎犬歯の転位,臼歯部交叉咬合,多量の歯石沈着と歯肉炎が認められた。また新たに歯冠近遠心幅径が大きいことが認められた。
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