2015 年 53 巻 1 号 p. 60-68
近年子どもの口唇閉鎖や舌の働きに関する様々な報告がされているが,開咬児に着目されたものは少ない。そこで今回,本学付属病院小児歯科外来を受診した8 歳から11 歳までの正常咬合児15 名ならびに開咬児15 名を対象として多方位口唇閉鎖測定装置による口唇閉鎖力の測定,簡易型舌圧測定装置を用いた舌圧の測定,アンケートによる聞き取り調査を行い,開咬児の小児期における口唇閉鎖力の特性ならびに舌の働きについて検討した。正常咬合児,開咬児の両群の口唇閉鎖力の比較では,8 つのチャンネルのうち鼻下における1 点について開咬児の口唇閉鎖力は正常咬合児に比べ有意に弱い結果が得られた。この結果から,開咬児は上口唇の閉鎖機能が弱く,口唇が閉鎖しにくい可能性が示唆された。また,舌圧の測定からは,正常咬合児,開咬児の両群に有意差は見られなかった。口蓋への舌挙上の運動についても,正常咬合児と開咬児は類似している事が示唆された。アンケートの結果からは,開咬児は口が開きやすく,鼻と口で呼吸する傾向があることがあきらかになった。