小児歯科学雑誌
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臨床
気管挿管が原因と考えられた上顎乳前歯の萌出不全の1例
松崎 祐樹内川 喜盛星山 紘子新見 嘉邦白瀬 敏臣
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2015 年 53 巻 1 号 p. 81-88

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抄録

気管挿管による極・超低出生体重児の口腔内への影響は多数報告されているが,本邦における報告例は少ない。また,乳児期の気管挿管による口腔内への影響は,歯の萌出後にわかる軽度なエナメル質形成不全や成長発育のcatch-up により症状が緩和された状態が多く,初めて歯科医院に来院する時期には認知されにくい。今回我々は,気管挿管の影響によると考えられた上顎左側乳前歯の萌出不全,エナメル質形成不全および前歯部交叉咬合を認めた1 例を経験した。患児は,超低出生体重児であり,3 か月にわたり気管挿管を行っていた。初診時の口腔内は上顎左側乳中切歯,乳側切歯,乳犬歯の萌出不全および反対側前歯部の交叉咬合を認め,全身麻酔下において開窓,歯牙腫様硬組織の摘出を行った。その後,乳前歯の萌出を認め,経過観察とともに交叉咬合の改善が認められた。一方,歯牙腫様硬組織は乳側切歯の重度のエナメル質形成不全であり,萌出した乳中切歯および乳犬歯にもエナメル質形成不全が認められた。本症例は,局所的な異常であり,その部位が挿管と関連した部位であることから,新生児期の気管挿管の影響によるものと考察した。以上のことから,気管挿管を行った極・超低出生体重児においてはエナメル質形成不全,交叉咬合,口蓋の形態異常などを認める可能性があり,症例に応じた適切な対応・処置が肝要であると考えられた。

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© 2015 日本小児歯科学会
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