2015 年 53 巻 1 号 p. 89-94
13トリソミー症候群は,第13番染色体が1本過剰な先天異常症候群である。本症候群は1歳までに95%が死亡し,生命予後が極めて不良な症候群であるため,口腔所見を検討した報告が少ない。歯科領域からの報告では,口唇口蓋裂,狭口蓋,第三大臼歯の高頻度欠損,上顎犬歯の転位,矮小歯,下顎後退,側方臼歯部交叉咬合,多量の歯垢蓄積,全顎的な歯肉炎がみられる。13トリソミーの20%は13番染色体の部分トリソミーであり,13部分トリソミーの歯科所見の報告はない。今回,我々は13部分トリソミーの女児の歯科治療を経験したので報告する。患児は14歳であり,歯列不正を主訴に来院した。本症例は10歳時に某県立こども病院遺伝科にて13部分トリソミーと診断された。咬合誘導と多数歯の齲蝕治療を行い,その後齲蝕の発症を予防するため口腔衛生指導を行った。患児の口腔所見として,これまで13トリソミーで報告されている第三大臼歯の欠損,上顎犬歯の転位,臼歯部交叉咬合,多量の歯石沈着と歯肉炎が認められた。また新たに歯冠近遠心幅径が大きいことが認められた。