小児歯科学雑誌
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臨床
非感染性下顎骨骨髄炎と掌蹠膿疱症を伴うSAPHO症候群の1例
増田 啓次山座 治義磯村 麻衣子柳田 憲一小笠原 貴子西垣 奏一郎廣藤 雄太野中 和明
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2015 年 53 巻 3 号 p. 427-434

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抄録

SAPHO 症候群は,骨・関節・皮膚に無菌性の炎症性病変を生じる疾患で,早期に診断すれば抗炎症薬を中心とした薬物治療により予後良好である。口腔顎顔面領域における骨病変の好発部位は下顎骨である。しかし,胸骨,脊椎,四肢長管骨などに比べて頻度は低く診断に苦慮することがある。薬物治療が遅れて慢性化すると,下顎骨の肥大や変形をきたし侵襲の大きい外科治療が行われる場合もある。

今回,我々は非感染性下顎骨骨髄炎と掌蹠膿疱症を伴うSAPHO 症候群の1 例を経験した。症例は,歯科治療の2 か月後に出現した右頬部腫脹と疼痛を主訴とする7 歳の女児で,抗菌薬は無効であった。手指および足底には,右頬部の症状と同時期に出現した皮膚病変があり掌蹠膿疱症を疑われていた。顔面CT 検査では右下顎角から下顎枝に骨融解像および骨膜反応を,また右咬筋,内側翼突筋およびリンパ節の腫大を認めた。歯科治療歴から,歯性感染に起因する右下顎骨骨髄炎を疑われ当科を紹介された。口腔内を精査したが感染源は不明であった。当院小児科に精査を依頼し,CT, PET, MRI による全身精査とともに骨および皮膚病変の生検を行った。検査結果と臨床経過から,非感染性下顎骨骨髄炎と掌蹠膿疱症を伴うSAPHO 症候群と診断した。非ステロイド性抗炎症薬により症状は速やかに改善した。感染源不明の下顎骨骨髄炎を疑う場合は本症候群を考慮すべきである。

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© 2015 日本小児歯科学会
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