小児歯科学雑誌
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臨床
混合歯列期小児の全身麻酔中に生じた幼若永久歯外傷の1例
増田 啓次山座 治義松石 裕美子磯村 麻衣子柳田 憲一西垣 奏一郎小笠原 貴子廣藤 雄太野中 和明
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キーワード: 全身麻酔, 幼若永久歯, 外傷
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2015 年 53 巻 3 号 p. 421-426

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抄録

今回,我々は全身麻酔下に上顎正中部埋伏過剰歯,交換期│└B─の抜去および上唇小帯切除術を施行した後,麻酔の覚醒処置中に,前歯部にずれたバイトブロックの噛みしめにより└│1─が脱臼し唇側転位した1 例を経験した。埋伏過剰歯は1─│┘口蓋側の骨削合のみにより抜去し得た。─1┴│─1は正中離開し,両歯とも歯根は1/2 程度完成していた。1─│┘の遠心には歯根吸収のない─C│┘が近接していた。└│1─については└│B─を抜去した結果,遠心に近接する歯がなくなり正中離開と合わせて孤立歯となった。下顎に孤立歯はなかった。

以上より,前歯部にずれたバイトブロックの噛みしめにより生じた力が,歯根の短い│└1─に集中したため側方転位したと考えられた。

混合歯列期はUgly duckling stage であることも多く,1─┴│─1は単根歯で歯根形成途中のため不安定であるだけでなく,正中離開,隣接する─B│┴B─の脱落・抜去などが加わり孤立歯となる場合がある。したがって,混合歯列期小児の全身麻酔中の歯の損傷リスクは歯の動揺度だけでなく,隣在歯の萌出状況および手術内容も含めて多角的視点から評価する必要がある。損傷リスクの高い交換期乳歯は術前もしくは術中抜去,幼若永久歯は覚醒・抜管時のマウスガードによる保護に努めるべきである。また,この時期特有の歯の損傷リスクについて術前に麻酔医と確認するとともに,保護者への説明も不可欠である。

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© 2015 日本小児歯科学会
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