小児歯科学雑誌
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総説
小児期の上気道通気障害がもたらす顎顔面歯列咬合形態への影響と小児歯科からの睡眠医療への貢献
岩崎 智憲
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2016 年 54 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

小児期の呼吸が顎顔面形態におよぼす影響について数多くの研究が行われてきた。しかし,上気道通気状態の適切な評価が困難なためコンセンサスは得られていない。そこで我々はコーンビームエックス線CT データを用いて上気道3 次元モデルを構築し,空気の流れを機能的に評価する流体解析を用いた精度の高い上気道通気状態の解析方法を確立した。その結果,ClassⅢ小児の咽頭気道形態では咽頭部の長径,幅径が大きく,低位舌を認めることを示す一方,ClassⅡ小児では上気道通気障害が長顔傾向の原因になり得ること,また,上気道の中でも鼻腔,上咽頭,口腔咽頭,下咽頭など様々な部分がその原因部位になることを明らかにした。さらに上顎骨急速拡大により鼻腔通気状態が改善すること,咽頭気道の気道体積が増大すること,鼻腔通気状態の改善に伴い低位舌が改善することを明らかにし,上顎骨急速拡大が上気道通気障害の改善におよぼすメカニズムを明らかにした。 今後,有病率が2%と高頻度で,医科的対応法による治療成績が70%程度とされる小児閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対して,その有効性が指摘されている上顎骨急速拡大や下顎前方誘導などの歯科的対応法を応用した治療効果のエビデンスを発信し,小児歯科からの新たな社会貢献に努めたい。

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© 2016 日本小児歯科学会
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