小児歯科学雑誌
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臨床
化学療法により歯の形成に差異がみられた神経芽細胞腫の2症例
棚瀬 精三
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2016 年 54 巻 3 号 p. 384-395

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抄録

神経芽細胞腫,病期分類ステージⅢと診断され,化学療法を受けて治癒した2 症例を経験した。本腫瘍は予後因子に関わる病期分類,初発年齢,腫瘍細胞遺伝子増幅の有無,病理学的分類などから総合的にリスク度が分類され,治療法が選択される。

症例1 は初発年齢が1 歳8 か月で,MYCN 遺伝子増幅が有り,高リスク群と診断された。1 歳10 か月から2 歳4 か月の間に,多剤併用化学療法5 クールと自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法を受けた。症例 1 には歯の発育異常がみられ,第二乳臼歯根の短小化,第一大臼歯,上下顎両側中切歯・側切歯の歯根の短縮と矮小化,上下顎両側第一小臼歯の矮小化と上顎左側第二大臼歯の欠如がみられた。

症例2 は初発年齢が0 歳10 か月で,MYCN 遺伝子増殖はなく,中間リスク群と診断された。0 歳10 か月から1 歳1 か月の間に,多剤併用化学療法を5 クール受けたが,末梢血幹細胞移植併用大量化学療法は受けていない。症例2 は,乳歯,永久歯ともに歯の発育異常はみられなかった。

歯の発育に影響を与える化学療法の強度の境界レベルは2 症例のみからでは明白にできないが,症例1 の方が強度の高い化学療法を受けている。症例1 は前歯歯根が短小根で骨植堅固でないために,開咬と反対咬合という咬合異常が起こりやすかったことが考えられた。またその治療も歯に強い矯正力を与えない配慮が必要である。

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© 2016 日本小児歯科学会
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