小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
原著
片側性完全唇顎口蓋裂児の口唇形成による口腔周囲筋活動の変化と筋協調パターンの特徴
佐野 祥美小倉 英稔近藤 亜子近藤 俊奥本 隆行今村 基尊吉村 陽子田村 康夫飯沼 光生
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 54 巻 4 号 p. 433-442

詳細
抄録

本研究は積分値移動曲線法を用いて,口唇口蓋裂(CLP)児における口唇形成術前後の口腔周囲筋活動の変化と筋協調パターンの特徴について検討を行ったものである。 被検児はF 大学病院に通院中の片側性完全唇顎口蓋裂児10 名である。計測は口唇形成術前,術後,術後 3 か月の計3 回行い,吸啜運動時の口腔周囲筋活動を計測した。口腔周囲筋活動は左右側頭筋(L­R, TM)と咬筋(L­R, MM),唇裂とは反対側(健側)の口輪筋(OM),舌骨上筋群(SM)の6 筋に双極表面銀電極を貼付し記録し,TM とMM は健側のみを分析対象とした。また,被検児と同様の有弁型人工乳首を使用している4 か月の健常乳児8 名と比較検討を行った。 その結果,ピーク時筋活動量については,OM は術前と比較し,術後と3 か月後で有意に増大していた(p<0.05)。SM は3 群とも健常乳児と比較して有意に小さい値を示した(p<0.05)。ピーク時間割合については,SM は1 吸啜サイクルの後半にピークがある健常乳児に対し,CLP 児は3 群とも中盤付近に位置していた(p<0.05)。CLP 児のSM の積分値移動曲線は起伏が不明瞭であり,口腔周囲筋協調パターンは健常乳児と異なっていた。 以上より,CLP 児は口唇形成後にOM の活動が活発になるのに対し,SM は術後も活動は小さいままであり,ピークが不明瞭であったことから,健常乳児とは異なった筋協調パターンで吸啜運動を行っていることが示唆された。

著者関連情報
© 2016 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top