小児歯科学雑誌
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臨床
両側性に現れた上顎第一大臼歯の臼傍結節の稀な1例
久保田 文恵石井 香高村 伊都子藤村 理衣重岡 真理子
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2016 年 54 巻 4 号 p. 494-498

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抄録

臼傍結節は第二,第三大臼歯に片側性に一つ認められことが多く,第一大臼歯における報告は稀である。今回,我々は齲蝕の精査を主訴に来院した10 歳女児において,萌出遅延を示した上顎第一大臼歯に左右対称的に2 個ずつ結節を認めるという極めて稀な症例を経験したので報告する。 本症例では,上顎左右第一大臼歯の萌出遅延が認められ,特に左側が遅れていたため開窓を行った。萌出していた右側第一大臼歯では頬側面に2 個の臼旁結節がみられ,開窓後に萌出してきた左側第一大臼歯でも頬側面に右側第一大臼歯よりさらに大きな2 個の臼傍結節を認めた。臼傍結節を呈する歯においては,歯冠部が複雑な形態を呈しているため齲蝕に罹患しやすいばかりでなく,歯周疾患にも罹患しやすい。また,臼傍結節内に固有の歯髄腔を有している例や正規の根管と連続している例など様々な症例が報告され,歯髄感染を生じると歯内治療の困難さも考えられるため,齲蝕予防処置を行いながら定期検診を継続することが特に重要と考える。

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© 2016 日本小児歯科学会
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