小児歯科学雑誌
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臨床
含歯性嚢胞により上顎前歯部の萌出障害を生じた1例
高桑 明子三瓶 伸也市川 智巳廣岡 沙由梨芳野 素子春藤 勲遠藤 敏哉関本 恒夫
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2016 年 54 巻 4 号 p. 499-506

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抄録

今回,著者らは,8 歳の女児の上顎前歯部に発現した含歯性嚢胞を経験した。治療法は,埋伏した上顎左側中切歯,側切歯,犬歯の保存を目的とし,開窓術を選択した。術後1 か月より嚢胞腔の縮小化がみられ,術後7 か月で上顎左側中切歯と側切歯が自然萌出したが,萌出位置がかなり低位であったため,牽引処置が必要であった。牽引には,セクショナルブラケット装置,トランスパラタルアーチおよび0.014 inch Ni ­Ti アーチワイヤーを用いた。装置装着から1 年5 か月後,上顎左側側切歯の上方に犬歯が自然萌出したため,チェーンタイプエラステックを用いて歯列内へ誘導した。装置装着から2 年10 か月後,上顎前歯の叢生および捻転が改善したため装置を撤去した。装置撤去時のエックス線写真より,上顎左側中切歯,側切歯,犬歯はいずれも健全な歯根形成が確認された。 本症例では成長・発育への影響を考慮し,早期に誘導処置を行うことで良好な結果が得られた。

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© 2016 日本小児歯科学会
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