小児歯科学雑誌
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臨床
神経芽腫治療に伴い生じた歯の形成障害の1例
唐木 隆史太田 増美中村 由美子朝田 芳信
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2017 年 55 巻 1 号 p. 61-68

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抄録

神経芽腫は腎臓の上にある副腎や頸から骨盤までの脊椎の両側にある交感神経節から発生し,白血病,脳腫瘍に次いで発症率が高い小児悪性腫瘍である。今回我々は,神経芽腫治療に伴い歯の形成障害を生じた11 歳11 か月の女児の1 例を経験したので報告する。患児は3 歳10 か月時に神経芽腫(stageⅣ)と診断され3 歳11 か月時から4 歳3 か月時に化学療法,手術療法,放射線療法(左側頸部照射10 Gy,全身照射10 Gy),造血幹細胞移植療法が施行され,6 歳2 か月時まで13­cis­レチノイン酸内服が行われた。 今回,口腔内所見より,上顎両側第一大臼歯,上顎両側第二乳臼歯,上顎両側第一小臼歯,下顎右側第二小臼歯の齲蝕,上顎両側中切歯の唇側傾斜,上下顎前歯部に叢生が認められた。エックス線所見より上下顎両側第二大臼歯,上顎左側第二小臼歯ならびに下顎両側第二小臼歯に矮小歯,全顎的な歯根の形成不全,上顎右側第二小臼歯の歯胚欠如,下顎左側第二大臼歯による下顎左側第一大臼歯遠心歯頸部吸収が認められた。これらの著しい歯の形成障害や顎骨の発育異常は,化学療法,放射線療法,造血幹細胞移植療法の併用により誘発された可能性が示唆された。

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© 2017 日本小児歯科学会
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