2017 年 55 巻 3 号 p. 364-374
本学小児歯科学臨床基礎実習は将来的なポートフォリオ評価導入を念頭に平成24年度から「ルーブリック」と「振り返り」の記入を一体化した表(ルーブリック表)を試行導入した。ポートフォリオ評価には評価基準として「ルーブリック」を用いるのが有効で,「振り返り」が必須とされている。今回,我々はルーブリック表が実習や学習に有効かを検討するため,無記名式アンケートによる意識調査と自己評価点から有用性の検討を行った。対象は平成24~27年度に小児歯科学臨床基礎実習を受講し,ルーブリック表の記入や結果の公表に同意した4年次学生とした。アンケートはルーブリック表の効果や日々の学習への反映を問う内容とした。有用性の検討は,ルーブリックを用いてアウトカムに対する自己評価をさせ,各項目の平均点について初回と最終回で比較を行った。その結果,全年度でルーブリック表を実習に導入することに対して肯定的な意見が多数を占めた。その理由として,「振り返り」の効果を挙げる学生が多かった。自己評価点からの有用性の検討では,全年度で「自己学習能力」が初回に対して最終回で有意に高かった。「プロフェッショナリズム」も全年度で上昇し,4年度中,3年度で有意に高い値を示した。以上のことから,実習に試行導入したルーブリック表は学生の振り返りを促し,自己学習やプロフェッショナリズムを意識づける有効なツールとなることが示唆された。