小児期の齲蝕は統計学上経年的に減少傾向を示しているが,学童期を過ぎ成人期に至る過程で急速に口腔内の健康状態が悪化していく。このことは歯科健康管理が他律期においては優れた成果を挙げてきたものの,子供達における健康の自律獲得支援の面では課題が存在することを示唆している。そこで今回,歯科疾患と生活習慣との関連について調査を行った。被験者は男児57名,女児43名(平均年齢4歳6か月,そのうち齲蝕あり57名,齲蝕なし43名)の100名を対象とした。被験者に対し家庭環境,基本的な生活習慣,歯科に関する事項,食生活習慣に関する調査を行ったところ,母親の就労ありの群および就寝時間が22時以降の群で齲蝕罹患が有意に多かった。祖父母の同居,きょうだいの有無,起床時間,齲蝕予防法に関する知識,歯みがきの回数,フッ化物の使用経験,かかりつけ歯科医の有無に関しては,有意差はみられなかった。さらに,齲蝕ありの群では甘味摂取の回数が有意に多く,かつすべての齲蝕ありの児が1日の推定エネルギー必要量(kcal/日)を超えたエネルギー量を摂取していた。さらに,1日に摂取した総エネルギー量から甘味による摂取エネルギー量を差し引いても,齲蝕ありの群では3回の食事だけですでに1日の推定エネルギー必要量を超えていることが明らかになった。子供を取り巻く環境の変化の中で,とりわけ味覚や食事に対する考え方など食行動の基本が形成される小児期に過栄養や偏った甘味優位な栄養習慣が歯科保健の自律獲得の過程に影響を及ぼしているのではないかと考えられた。