小児歯科学雑誌
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56 巻 , 1 号
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原著
  • 杉本 明日菜, 赤澤 友基, 河原林 啓太, 宮嵜 彩, 上田 公子, 北村 尚正, 岩本 勉
    2018 年 56 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    口腔筋機機能療法(Oral Myofunctional Therapy : MFT,以下MFT)は口腔周囲筋のバランスの調和をとることで,歯列・咬合の形態を正常に維持することや,咀嚼・嚥下・構音といった小児期の口腔機能の発達支援を目的として行われる治療法の1 つである。様々な訓練方法が提案されているが,個々の訓練の効果について検討された報告は少ない。そこで,今回当科で実施したMFT について一連の訓練を行い,かつ発表に際して同意の得られた20 名(男児15 名,女児5 名,平均年齢7 歳7 か月)についてその治療効果の検討を行った。 その結果,訓練前・後で比較して口唇閉鎖不全のある児は55%から35%,嚥下時舌突出のある児は100 %から50%,構音時舌突出のある児は95%から60%に減少し,改善がみられた。とくに嚥下時舌突出と訓練法の1 つである「スラープスワロー」との間に相関を認めた。しかし,訓練が達成できていても機能の改善が十分でない児もおり,さらなる訓練法や訓練時期の検討が必要であると考えられた。 様々な分野で口腔機能が注目されているが,とりわけ小児期での口腔機能の獲得は生涯を通じての健康に非常に重要な意味をもつ。本調査では20%の児は形態的な問題を有しておらず機能面の問題のみを呈していた。こうした児についても積極的に介入し口腔機能を向上させることは将来の健康寿命延伸に有意義である。そのため,小児の発育・発達に沿った訓練を構築し,口腔機能獲得の支援法として提案することが必要である。

  • 山本 祐士, 佐藤 秀夫, 橋口 真紀子, 伴 祐輔, 北上 真由美, 山﨑 要一
    2018 年 56 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    著者らは平成22年7月より,小児歯科外来内に発達期摂食嚥下障害専門外来(以下,もぐもぐ外来)を開設し摂食指導を行ってきた。開設から平成28年3月までの5年8か月の間にもぐもぐ外来を初診で来院した18歳未満の患児を対象として初診時の実態を把握し,評価するために臨床統計的検討を実施した。初診患児数は,男児112名,女児82名,計194名であった。年齢分布は,0歳0か月から17歳11か月で,平均は3歳9か月(男児4歳1か月,女児3歳7か月)であった。医療機関別紹介患児数は歯科以外の医療機関が約50%を占めたが,離島など遠隔地の医療機関からの紹介は1%に留まった。受診患児の20%以上は低出生体重児として,あるいは早産児として出生しており,定型発達児と比較し,粗大運動の発達が未熟であった。摂食嚥下障害を認める患児に対しては,医療機関や教育機関,施設との緊密な連携を図り,より多くの患児に対して早期介入が可能となる体制の構築が必要である。小児歯科医は,顎顔面領域の形態と摂食嚥下機能が著しく発達する小児患児に密接に関わっており,摂食嚥下機能獲得と形態発育を円滑に促すという極めて重要な役割を担っている。

  • 宮川 尚之, 岩﨑 智憲, 菅 北斗, 伴 祐輔, 山﨑 要一
    2018 年 56 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    本研究は小児の口呼吸が睡眠や日中の行動におよぼす影響を明らかにすることを目的に,アンケート調査を行った。2017年7月と8月に鹿児島県内の歯科医院を受診した特記すべき既往のない3歳から12歳までの小児165名(男児73名,女児92名,平均年齢8.3±2.3歳)を対象とした。睡眠中にいびきをかく頻度は27.3%,息が止まる頻度は2.4%だった。口呼吸の頻度は16.4%で,口呼吸を認める場合,胸郭陥凹,開口,鼾,起床困難,風邪,鼻水,嚥下困難,日中傾眠,注意欠陥,多動を示し,小児の口呼吸は睡眠や日常生活に大きな影響をおよぼすことが示された。以上のことから,われわれ小児歯科医が小児の口腔を通した健全な成長発達に貢献するためには,齲蝕をはじめとする硬組織疾患,顎顔面歯列咬合異常や摂食・咀嚼・嚥下障害などの形態的・機能的な問題点に加えて,呼吸に関しても十分な注意を払う必要があることが示された。

  • 河原林 啓太, 杉本 明日菜, 赤澤 友基, 上田 公子, 北村 尚正, 宮嵜 彩, 岩本 勉
    2018 年 56 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    小児期の齲蝕は統計学上経年的に減少傾向を示しているが,学童期を過ぎ成人期に至る過程で急速に口腔内の健康状態が悪化していく。このことは歯科健康管理が他律期においては優れた成果を挙げてきたものの,子供達における健康の自律獲得支援の面では課題が存在することを示唆している。そこで今回,歯科疾患と生活習慣との関連について調査を行った。被験者は男児57名,女児43名(平均年齢4歳6か月,そのうち齲蝕あり57名,齲蝕なし43名)の100名を対象とした。被験者に対し家庭環境,基本的な生活習慣,歯科に関する事項,食生活習慣に関する調査を行ったところ,母親の就労ありの群および就寝時間が22時以降の群で齲蝕罹患が有意に多かった。祖父母の同居,きょうだいの有無,起床時間,齲蝕予防法に関する知識,歯みがきの回数,フッ化物の使用経験,かかりつけ歯科医の有無に関しては,有意差はみられなかった。さらに,齲蝕ありの群では甘味摂取の回数が有意に多く,かつすべての齲蝕ありの児が1日の推定エネルギー必要量(kcal/日)を超えたエネルギー量を摂取していた。さらに,1日に摂取した総エネルギー量から甘味による摂取エネルギー量を差し引いても,齲蝕ありの群では3回の食事だけですでに1日の推定エネルギー必要量を超えていることが明らかになった。子供を取り巻く環境の変化の中で,とりわけ味覚や食事に対する考え方など食行動の基本が形成される小児期に過栄養や偏った甘味優位な栄養習慣が歯科保健の自律獲得の過程に影響を及ぼしているのではないかと考えられた。

  • 海原 康孝, 笹原 妃佐子, 香西 克之, 新里 法子, 櫻井 薫, 二川 浩樹, 細原 賢一, 山崎 健次
    2018 年 56 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    小学校において被虐待児にみられる行動特徴から要保護児童をスクリーニングできる質問紙を作成するために,教職員にとって判断が容易で信頼性の高い回答が得られる項目を厳選するための基礎調査を行った。64名の小学校の教職員に,35項目からなる同じ内容の質問紙に2週間の間隔をあけ,2回回答してもらった結果を照合し,質問内容の判断の容易さ,回答の再現性,および文章表現について検討した。

    1.学校現場で教職員が判断するのが難しい質問項目は,「トイレの後に手を洗わない」,「行事の時の弁当が手作り弁当ではない」,「保護者と目を合わさず,おどおどする」,「家族関係に変化があった」,「年齢にそぐわない性的な言動がみられる」,「病気になっても病院に行かない」,および「過度な警戒心を持つ」であった。

    2.回答の信頼性の低い質問項目は,「やせすぎている」,「行事の時の弁当が手作り弁当ではない」,「よく教室から離れる」,および「保護者と目を合わさず,おどおどする」であった。

    3.表現が不適切であると指摘された質問項目は,「時々嘘をつく」,「友達をいじめる」,および「集団になじめないところがある」であった。

    今後は,上記の質問項目を除いた質問項目からなる質問紙を作成し,実際に児童を対象とした調査を行い,要保護児童のスクリーニング指標としての有効性について検証する必要があると考えられる。

  • 高橋 紗耶, 白瀬 敏臣, 梅津 糸由子, 新見 嘉邦, 山崎 てるみ, 内川 喜盛
    2018 年 56 巻 1 号 p. 42-49
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    都心に位置する大学病院小児歯科の近年の口腔軟組織疾患の傾向を知ることを目的として,2010年4月から2016年3月までの6年間に,口腔軟組織疾患を主訴に当科を受診した0歳から15歳未満の315名の初診患者について実態調査を行った。

    1.口腔軟組織を主訴に受診した初診患者の割合は6.8%であった。

    2.性別は,男児181名,女児134名であった。

    3.初診時年齢は,6歳が最も多く,平均年齢は4.7歳であった。

    4.紹介の有無は,紹介あり211名,紹介なし104名であった。

    5.受診者の居住地域は,東京都23区243名,東京都23区以外26名,他県46名であった。

    6.疾患別受診者数は,舌小帯付着異常91名,上唇小帯付着異常58名,粘液嚢胞53名の順に多かった。

    7.初診時の対応は,経過観察263名,処置37名,他科依頼15名であった。舌小帯付着異常の患者は6歳が最も多く,処置年齢ならびに言語聴覚士への依頼年齢はともに5歳が最も多かった。上唇小帯付着異常の患者ならびに処置年齢は7歳が最も多かった。粘液嚢胞の患者は1歳から8歳の幅広い年齢層でみられ,処置年齢は5歳から7歳に集中していた。口腔軟組織疾患を主訴に受診する患者は低年齢児にも多く,早期に精査し介入の有無を判断する必要がある。大学病院小児歯科として,地域医療機関ならびに病院内の関連診療科と連携し対応する必要がある。

  • 園本 美惠, 河合 咲希, 永田 幸子, 池田 まりあ, 人見 さよ子, 西村 貴子, 篠永 ゆかり, 阿部 洋子, 原田 京子, 有田 憲 ...
    2018 年 56 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    本研究は乳歯外傷の予防に利用することを目的として,大学病院小児歯科における10年間の0~5歳の乳歯外傷患児の診療録を用いて事故事例調査を行い,年齢別に受傷数,受傷場所,受傷原因および高頻度類似事例について集計・分析を行い,以下の結果を得た。

    1.0歳~5歳の新患患児3238人のうち乳歯外傷患児は312人(9.6%)で,1歳児が最も多く,次いで2歳児であった。

    2.受傷場所は,0~2歳児は,64~78%が家庭内であったが,3・4歳児は保育所・幼稚園,公園,路上など様々な場所で受傷しており,5歳児は公園や屋内施設が多かった。

    3.家庭内では,居間・台所・寝室での受傷が最も多く,1歳と2歳児では約40%が同所で受傷していた。そのうち家具との衝突が最も多く,特にテーブルが多かった。階段での受傷は7.4%で,1歳児が過半数を占めていた。保育所・幼稚園でも屋内が80%と突出して多かった。公園での受傷は,1歳以降増齢的に増加し,遊具が多く,その6割はすべり台であった。

    4.受傷原因は,全ての年齢で転倒が最も多かった。転落は0歳児と5歳児に多く,衝突は1~4歳児に多かった。

    5.家庭内で特定の類似した外傷事例が頻発していることが明らかとなった。

    以上より,乳幼児期の歯の外傷は児の運動機能をはじめとした身体発達につれて受傷に特徴があることが認められ,特に発生頻度の高い年少児をもつ保護者に対して歯の外傷予防に関する啓発活動の必要性が示唆された。

  • 小野 幸絵, 小松崎 明, 田中 聖至
    2018 年 56 巻 1 号 p. 56-64
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    国民生活基礎調査の匿名データを用い,小児期の口腔を含む「自覚症状名:ここ数日,病気やけがなどで具合が悪いところ(以下,症状名とする)」,「通院傷病名:現在,どのような傷病で医療機関等に通っているか(以下,傷病名とする)」について,相対的な評価や生活状況との関連性を検討した。

    対象者は0~14歳の平成22年度国民生活基礎調査の回答者2,129名である。

    各項目間の比較は分割表により分析した。回答率が高かった項目については,回答類似性を検討するため,階層クラスター分析を実施し,以下のような結果を得た。

    1.自覚症状を有する者は502名(23.6%),通院している者は413名(19.4%)であった。

    2.症状名,傷病名ともに呼吸器系や皮膚の項目は上位となっていた。

    3.歯科系の症状名は症状名順位で比較的低位に位置していたが,傷病名では全体順位で2位となっており,「最も気になる傷病名」でも比較的上位に位置していた。症状名,傷病名ともに,回答回答順位と「最も気になる」との相対評価順位では,多くの項目で順位に変動が認めらた。

    4.社会的要因との関連については,総所得と自覚症状の有無との比較で関連が認められ(p<0.01),所得額が低い群で自覚症状が「ある」者が多かった。また,生活意識が「ゆとりある」群で,傷病名「歯の病気」で通っている割合が高く,両項目間に関連が認められた(p<0.05)。

    5.階層クラスター分析の結果,樹状図の配置は,生活意識や総所得の近隣に皮膚症状・傷病が位置していた。歯科系の項目では,症状名「歯が痛い」「歯ぐきはれ・出血」は傷病名「歯の病気」と隣接していたが,「かみにくい」は両者より離れており,症状名により通院行動に対する影響度に違いがあると示唆された。

    これらの結果から,小児期における自覚症状,傷病名の認識や相対的評価に関する特徴が把握でき,その傾向を踏まえて今後の歯科保健対策を検討する必要がある。

  • 大塚 愛美, 菊池 元宏, 下山 哲夫, 朝田 芳信
    2018 年 56 巻 1 号 p. 65-72
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    著者らは本院小児歯科外来に初診来院した,2歳から9歳の定型発達男児147名ならびに定型発達女児108名を対象に,初来院時から4回目の診療までの協力状態を評価し,治療の進行による協力型の推移について検討したところ,以下の結論を得た。

    1.各年齢における記録時期別のFrankl分類について,最も多かったFrankl分類は,合計では1回目から4回目の全ての記録時期でClass 3であり,最も少なかったのは,Class 1であった。また,総じて年齢が上がるにつれてClass 1とClass 2は減少する傾向にあった。

    2.Class 1とClass 2を【不適応型】,Class 3とClass 4を【適応型】として2群に分けた際,3歳児において記録時期に独立性を認めた。また,3歳を境に【適応型】と【不適応型】の大小関係が逆転した。

    3.各年齢における協力型の推移について,最も多かった協力型の推移は,全体として(2­9歳)の合計では【適応継続型】,2歳児ならびに3歳児では【不適応継続型】,4歳児から9歳児では【適応継続型】であった。

    また,【適応継続型】は2歳児と3歳児で有意に少なかったものの,6歳児から9歳児で有意に多かった。【適応獲得型】は2歳児で有意に少なかったものの,3歳児で有意に多かった。【不安定型】は4歳児ならびに5歳児で,【適応喪失型】は4歳児で有意に多かった。

    以上のように,2歳児ではいかなる治療時期であっても協力型は低く,3歳では当初こそ協力型が低いものの,治療回数を重ねることによって協力型が増し,4歳児以降ではむしろ当初より協力型が高く,学童期に入れば協力型に関する問題はほぼ解決することが示唆された。

臨床
  • 西村 歩, 白瀬 敏臣, 松崎 祐樹, 北村 和夫, 内川 喜盛
    2018 年 56 巻 1 号 p. 73-80
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    中心結節は,小臼歯部の特に下顎に多く認められる異常結節で,萌出過程で破折すると歯根未完成歯に対して歯根の伸長や根尖閉鎖を促す処置が不可欠となる。処置後に見られるデンティンブリッジの形成や根尖閉鎖状況の確認は,主にデンタルエックス線写真やファイルによる手指感覚などを用いて行うが,その判断は臨床的には不明確である。

    今回我々は,中心結節の破折により急性化膿性歯髄炎を発症した歯根未完成下顎第二小臼歯に対して歯髄処置を行い,歯髄切断面ならびに根尖閉鎖状況の詳細をマイクロスコープと歯科用コーンビームCT(CBCT)を用いて確認した。患児は,下顎右側臼歯部の痛みを訴え,紹介医より中心結節の破折を指摘され来院した。口腔内診査で同部の中心結節破折を認め,急性化膿性歯髄炎の診断の下,麻酔抜髄したが,根尖部歯髄は残存していた。その後,デンタルエックス線写真上で歯髄切断面のデンティンブリッジ様硬組織による閉鎖と歯根の伸長を認めるアペキソゲネーシスの治癒形態をたどった。最終修復にあたり,保護者の同意のもと,マイクロスコープとCBCTにて視覚的に精査し,肥厚したデンティンブリッジ様硬組織による歯髄切断面の封鎖と正常に近い形の根尖閉鎖を確認した後,歯冠修復を行った。

    以上から,治癒形態が多岐にわたる歯根未完成歯への根管治療において,マイクロスコープとCBCTによる視覚的確認は根管内の構造を把握する上で重要なツールとなることが示唆された。

  • 北村 尚正, 杉本 明日菜, 河原林 啓太, 岩本 勉
    2018 年 56 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2018/02/25
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    過剰根とは,一般的な形態から逸脱した歯(奇形歯)の一種であり,複根や副根を有した歯根をいう1)。永久歯ではほとんどすべての歯種において過剰根を認めることは知られているが,乳歯において過剰根を認めることは極めて稀とされている。国内の過去の報告例においても,上下顎乳犬歯,上顎第2乳臼歯,下顎第2乳臼歯の臨床報告が数例あるのみで,上顎乳中切歯での報告はない。

    今回われわれは,上顎左側乳中切歯において2根2根管を有し,後継永久歯の萌出障害の一因となったと考えられた1例を経験したのでその概要を報告する。

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