2018 年 56 巻 1 号 p. 73-80
中心結節は,小臼歯部の特に下顎に多く認められる異常結節で,萌出過程で破折すると歯根未完成歯に対して歯根の伸長や根尖閉鎖を促す処置が不可欠となる。処置後に見られるデンティンブリッジの形成や根尖閉鎖状況の確認は,主にデンタルエックス線写真やファイルによる手指感覚などを用いて行うが,その判断は臨床的には不明確である。
今回我々は,中心結節の破折により急性化膿性歯髄炎を発症した歯根未完成下顎第二小臼歯に対して歯髄処置を行い,歯髄切断面ならびに根尖閉鎖状況の詳細をマイクロスコープと歯科用コーンビームCT(CBCT)を用いて確認した。患児は,下顎右側臼歯部の痛みを訴え,紹介医より中心結節の破折を指摘され来院した。口腔内診査で同部の中心結節破折を認め,急性化膿性歯髄炎の診断の下,麻酔抜髄したが,根尖部歯髄は残存していた。その後,デンタルエックス線写真上で歯髄切断面のデンティンブリッジ様硬組織による閉鎖と歯根の伸長を認めるアペキソゲネーシスの治癒形態をたどった。最終修復にあたり,保護者の同意のもと,マイクロスコープとCBCTにて視覚的に精査し,肥厚したデンティンブリッジ様硬組織による歯髄切断面の封鎖と正常に近い形の根尖閉鎖を確認した後,歯冠修復を行った。
以上から,治癒形態が多岐にわたる歯根未完成歯への根管治療において,マイクロスコープとCBCTによる視覚的確認は根管内の構造を把握する上で重要なツールとなることが示唆された。