小児歯科学雑誌
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原著
歯周組織に対するクラウンループの力学的影響
有限要素法による解析
横井 由紀子山木 貴子河村 純遊佐 辰徳江花 照夫岡藤 範正大須賀 直人
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2018 年 56 巻 4 号 p. 427-433

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抄録

クラウンループは,第一乳臼歯が片側性に1 歯早期喪失した場合,第一大臼歯の萌出スペースを保持するために用いられる標準的装置である。本研究の目的は,基礎研究のひとつとして,クラウンループが歯周組織に与える影響について検討することである。同時に,ループの強度についても検討した。 計算方法は以下の通りである:クラウンあるいはループ(W 形,U 形)に力が作用した場合について,乳犬歯と第二乳臼歯の歯根膜に生じる応力を有限要素法によって計算した。歯と歯槽骨は剛体と仮定した。 歯根膜は非線形弾性体とし,ループは線形弾性体のはりとした。第二乳臼歯の咬頭に圧下力を加えた。また,ループ頬側に圧下力あるいは舌側方向の力を加えた。 その結果,以下の結論を得た。

1 .第二乳臼歯の咬頭に圧下力が作用した場合,ループにはほとんど応力が生じなかった。すなわち,クラウンループは第二乳臼歯の歯根膜の応力に影響を与えなかった。

2 .ループ頬側に圧下力が加わった場合,第二乳臼歯の咬頭に圧下力が作用した場合に比べて,第二乳臼歯の歯根膜の応力は2~3 倍に増加した。また,先端がW 形のループ頬側に圧下力が加わった場合には,第二乳臼歯だけでなく乳犬歯にも応力が生じた。

3 .過大な咀嚼咬合力がループに加わった場合,ループとクラウンとの接合部で塑性変形が生じ破損する可能性が示唆された。

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© 2018 日本小児歯科学会
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