2020 年 58 巻 2 号 p. 33-38
Prevotella melaninogenicaはヒトの口腔に常在するグラム陰性嫌気性細菌で,化膿性疾患からも病原体として分離される。しかし,P. melaninogenicaの病原因子についてはほとんど知られていない。近縁種である歯周病細菌Porphyromonas gingivalisやTanerella forsythiaは,9型分泌機構(T9SS)を介してプロテアーゼや細胞表面タンパク質などの病原性因子を分泌する。ゲノム解読を行い,P. melaninogenicaにもT9SSのすべての既知オルソログが存在することから,本菌においても機能的なT9SSが存在することが示唆された。私たちはT9SSの主要構成タンパクであるPorKをコードする遺伝子の欠損株をP. melaninogenica GAI 07411において構築した。porK欠損株では,赤血球凝集とバイオフィルム形成が減少していた。また野生型株とporK欠損株の培養上清を精製し,プロテオーム解析を行ったところ,porK欠損株からの分泌タンパク質の数が減少していた。感染実験では,porK欠損株を接種したマウスの死亡率は,野生型株と比較して統計的に有意に減少していた。これらの結果から,P. melaninogenicaがT9SSを介してこの細菌の病態形成に関与する強力な病原性タンパク質を分泌することが示唆された。