2020 年 58 巻 2 号 p. 49-54
わが国の出生率は大きく低下し,小児を取り巻く環境に時代的変化がある。それに伴い大学病院小児歯科の役割にも変化がみられる。そこで大学病院に来院する患児の近年の傾向および地域性の違いを把握するために,2016年からの3年間に本学水道橋病院小児歯科(以下,水道橋)および,千葉歯科医療センター小児歯科(以下,千葉)を受診した16歳未満の初診患児を対象に,来院患児数,初診時年齢,来院動機,乳歯列齲蝕有病者の状況などを調査し,以下の結論を得た。
1.16歳未満の初診患児数は,水道橋が2,538人,千葉が2,850人であった。年別推移でみると,千葉は減少しており水道橋は増加していた。
2.来院動機は,両施設ともに齲蝕治療(水道橋:40.0%,千葉:39.6%)が多く,次いで歯列不正(水道橋:19.3%,千葉:18.3%)が多かった。齲蝕治療を来院動機とする患児は,水道橋では2歳(60.5%),千葉では4歳(64.7%)が最も多かった。
3.乳歯列期の初診患児における齲蝕有病者率は,水道橋では4歳(70.2%),千葉では3歳(56.6%)が最も高かった。
4.齲蝕有病者の年齢別df歯率は,両施設ともに4歳(水道橋:40.7%,千葉:43.5%)が最も高かった。
5.大学病院小児歯科では,齲蝕治療を希望して来院するものが多く,低年齢児であっても重症齲蝕罹患者が含まれていた。