2020 年 58 巻 2 号 p. 62-66
松原市歯科医師会(大阪府)では,治療の困難な小児や障害者の地区歯科医師会会員間での患者紹介システムを構築した。このシステムが地区歯科医師会内でどのように浸透し,どのような小児患者(18歳未満)が紹介されてくるかを分析検討し以下の結果を得た。
1.2013年10月から2019年12月の6年3か月間に紹介元医院数は14医院と市内の歯科医師会会員医院の24%にまで浸透した。
2.紹介元では主に齲蝕で痛みを訴えているが,低年齢・障害がある・歯科治療に関する過去の経験で恐怖心があるなどで対応できずに困っている様子がうかがえた。
3.小児患者の年齢は6歳未満が多数を占め,紹介理由は不協力小児が圧倒的に多いが,その中には紹介元では問診や治療時対応より障害の有無が判定できておらず,来院時に知的障害・自閉症・ADHDなどに新たに分類される場合が10%程度あった。
4.紹介から来院までの日数は中央値が5日であり,齲蝕で痛みがあり迅速な治療が必要な小児患者の半数以上が前医受診から1週以内に小児歯科専門医を受診していた。
5.不協力小児は緊急性のある4例がレストレーナーを使用したが,その他はTell-show-doやボイスコントロール法に加えて歯科衛生士による抑制で十分対応でき,抑制が全く不要な場合もあった。
地区歯科医師会内での小児患者紹介システムは,小児患者の紹介が促進され,地域の小児患者への歯科治療が充実してきている。