小児歯科学雑誌
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原著
小児歯科外来での被虐待児早期発見のための取り組みと支援
長岡 悠船山 ひろみ唐木 隆史古屋 吉勝藤原 由美子小平 裕恵永岡 春香日野 亜由美稲永 詠子朝田 芳信
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2020 年 58 巻 3 号 p. 123-131

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抄録

被虐待児は,外傷のほかに歯科的にも齲蝕の多発や長期的な齲蝕の放置,口腔衛生管理等の課題を抱えているといわれている。

本調査では,平成26年6月から平成27年7月までの期間に本学歯学部附属病院小児歯科外来を受診した初診患者1,344名のうち厚生労働省の3歳児健診歯科保健指導要領の齲蝕分類C2型に該当,または診療に当たった歯科医師・歯科衛生士やスタッフが虐待を疑う内容があると判断した患児187名を調査対象として,虐待に関するアセスメントシートの記入内容から,フローチャートに則り合議に至った8名と合議に至らなかった179名の比較検討を行った。

1.齲蝕に重点を置いて対象を選んだこともあり,合議に至らなかった179名,合議に至った8名ともに主訴は齲蝕が多く,齲蝕罹患型はC2型が多かった。

2.合議に至った8名は公的支援の受給の割合が高く,dft+DMFT指数も全国平均と比較して高かった。

3.合議に至った患児に関する特徴について,不衛生が75%で最も多かった。その養育者に関しては,発症から受診までの期間が長すぎる(1か月以上)が50%と最も多かった。

小児歯科診療では子供と接する時間が長く,情報提供により,虐待(ネグレクト)を未然に防ぎ重症化を予防できる可能性が高い。われわれ小児歯科医も,未来ある子供の成長を見守る一員として,各自治体と密に連絡を取り,多くの〝目〟で見守ることが肝要と思われる。

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© 2020 日本小児歯科学会
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