小児歯科学雑誌
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症例報告
顎裂に隣接する上顎中切歯に生じたセメント質過形成の1例
志賀 正康杉山 智美島田 幸恵船津 敬弘
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2020 年 58 巻 3 号 p. 182-187

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抄録

セメント質過形成は下顎臼歯部に多くみられる非腫瘍性病変であり,顎骨に生じる不透過性病変のなかでも稀な疾患である。今回,唇顎裂児の顎裂に隣接した中切歯歯頸部周囲にセメント質過形成が生じたことにより萌出障害を起こした1例を経験したため報告する。

患者は11歳男児。上顎左側中切歯の萌出障害のため矯正科より精査依頼があった。歯科用CTにより,上顎左側中切歯歯頸部に硬組織の過形成があると診断した。上顎左側中切歯の萌出,捻転の改善には過形成部の除去が必要と判断し,11歳6か月時に全身麻酔下にて処置を行った。処置後1か月で上顎左側中切歯の萌出が確認され,12歳2か月には捻転の改善を認めた。除去した硬組織はセメント質過形成と病理診断された。

これまで上顎前歯部にセメント質過形成を伴う報告はなく,過去報告された症例とは異なった成立機序である可能性が示唆された。

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© 2020 日本小児歯科学会
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