2021 年 59 巻 3 号 p. 125-130
乳歯の埋伏は永久歯の埋伏に比べ,発現頻度は低いとされる。その中でも乳歯埋伏歯のほとんどは第二乳臼歯とされ,下顎第一乳臼歯は稀有である。今回,4歳男児の歯牙腫による第一小臼歯歯胚の位置異常を伴った第一乳臼歯埋伏の症例を経験したので報告する。
埋伏した下顎左側第一乳臼歯歯胚上部にある歯牙腫を局所麻酔下にて摘出後,下顎左側第一乳臼歯の牽引を行った。2年後に,下顎第一乳臼歯は咬合位に達し,位置異常を生じていた下顎左側第一小臼歯歯胚が本来の位置に移動する傾向が確認できた。術後7年1か月後に,下顎左側第一小臼歯は咬合平面近くまで萌出した。乳歯埋伏は頻度が低いものの,後継永久歯の正常な発育を考慮し,埋伏乳歯の早期発見,治療が重要であることが示唆された。また位置異常を生じた後継永久歯の長期的な管理が正常な永久歯列の発育にとって重要であることが示唆された。