2021 年 59 巻 3 号 p. 131-139
今回著者らは,上顎左側乳犬歯が歯牙腫により萌出障害をきたした症例を経験した。患児は3歳児歯科健康診査にて上顎左側乳犬歯の未萌出を指摘され近医を受診し,4歳0か月時に当科への紹介に至った。4歳0か月時に近医で撮影されたパノラマエックス線写真にて,埋伏した上顎左側乳犬歯と,乳犬歯尖頭付近の不透過像が認められた。4歳2か月時に全身麻酔下にて検体1(臨床診断:歯牙腫)と検体2(臨床診断:嚢胞様組織)の摘出を行った。摘出物は病理組織検査にて検体1が複雑性歯牙腫,検体2が集合性歯牙腫であると診断された。4歳3か月時に上顎左側乳犬歯の萌出を認めたが,萌出位置が低位であり,歯列内への自然萌出は困難であると判断したため,牽引を開始した。牽引には,フック付きリンガルアーチとFMスーパースレッド®を用いた。牽引開始から11か月後,歯列内への誘導を認めたため装置の撤去を行い,その後は1か月間隔で経過観察を行った。5歳4か月時に上顎左側乳犬歯歯根の外部吸収が認められた。咬合紙による咬合診査を行ったところ,早期接触を認めたため,早期接触の除去を目的とした咬合調整を行った。その後,外部吸収の急激な進行は認められなかったが,7歳4か月時に脱落し,9歳1か月時に上顎左側犬歯が萌出を開始した。上顎左側犬歯は唇側低位の位置に萌出しており,今後さらに咬合誘導を行う必要があると考えられる。