小児歯科学雑誌
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総説
シングルセルRNAシーケンスによる歯原性細胞マーカー遺伝子の探索と機能解析
千葉 雄太
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2022 年 60 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

歯の形成異常は歯胚発生過程における遺伝子制御機構の異常が関与していると考えられているが,その原因遺伝子や疾患発生に関わる分子機序はいまだに不明な点が多い。特に,歯原性上皮細胞の中でも中間層細胞,星状網細胞,および外エナメル上皮細胞などに関しては解析が進んでおらず,そのマーカー遺伝子や細胞機能が同定されていない。われわれは近年新規に樹立された遺伝子発現スクリーニング法である,シングルセルRNAシーケンスを用いて,マウス切歯歯胚を構成する細胞の単一細胞レベルでの網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果,分泌期エナメル芽細胞は,2つの細胞集団に分類され,それぞれ異なる細胞特性を有することを明らかとした。加えて,本シングルセルRNAシーケンスデータを応用し,Helix症候群の責任遺伝子であるクローディン10が中間層細胞の新規マーカー遺伝子であり,歯の石灰化に重要な役割を有することを明らかとした。以上の結果より,本研究で樹立したシングルセルRNAシーケンスデータが歯原性細胞マーカー遺伝子の探索,および疾患遺伝子の病因解明に有用であることが示唆された。

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© 2022 日本小児歯科学会
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